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2002/6/24【朝日新聞社/AERA】「若者よ『政治』しよう」

 

「政治にもっと軽やかに関わっていこう」という若者の動きが出ている。「政治家づくり」や議員インターンの派遣。シラけている場合じゃない。(ジャーナリスト 天野一哉<文と写真>)

議員インターンを体験
ムネオ、カトウ、ツジモト、キョウギュウビョウの「ム・カ・ツ・キ4点セット」で揺れたこの春の永田町。衆議院第一議員会館にはリクルートスーツに身を包んだ大学生約70人が集まった。彼らの目的は春休みに国会議員のインターン(研修生)をすることだ。募集したのはNPO「ドットジェイピー(ジャパン・プロデュース)」。「新しい日本をカタチ創る」をモットーに98年に設立され、約600人の学生を延べ300人の議員に紹介してきた。運営も学生が中心に行っている。学生たちの志望理由は、「政治の世界をのぞいてみたい」「社会に出る前に経験を積みたい」「小泉首相に会えるかも」とさまざまで、将来、政治家になりたいという人は少ない。慶応大学3年生の若杉友紀さんは民主党の井上和雄衆院議員のインターンに採用された。若杉さんのある一日。
朝7時30分、議員会館の井上事務所へ。議員とともに8時からの緊急事態法に関する民主党の部会に出席するためだ。
9時30分には議員の代理で人権擁護部会に出席。
10時15分、事務所に戻り、部会のレポートを作成。日付の書き方からレイアウトまで議員に直接指導してもらったという。「日本の学生はアメリカに比べて、わかりやすいレポートを書くトレーニングができていない。もっと実社会を勉強してもらいたい」という思いから、井上議員はインターンを受け入れている。若杉さんの傍らではもう一人のインターンが支援者名簿の整理をしている。「それに雑用も片づくしね」と井上議員は笑う。
11時30分、議員会館の食堂で昼食。インターンは無給だが、食事代は事務所が出してくれる。
12時40分、国会内の民主党代議士会に出席。
13時、衆院本会議を傍聴。
14時、井上議員は鈴木宗男議員の沖縄疑惑に関する会議へ、若杉さんは事務所へ戻り、街頭演説のためのビラの作成。見出しは、「井上かずおは鈴木宗男疑惑を徹底追及します」
15時、国土交通省の官僚が「質問取り」に来る。翌日、井上議員は委員会で都市再生特別措置法案に関する質問をすることになっていた。官僚たちは井上議員の話を聞いて扇大臣の答弁を作成する。官僚は議員の主張を低姿勢で拝聴するが、前例や法律論を持ち出し、なんとか丸め込もうとしているようだ。しかし、質問時間の半分は「鈴木問題」をやると聞くと、官僚たちは一様にホッとした表情になる。それを見た議員はこう突っ込んだ。
「この法律をつくってデベロッパーに天下りしようと思ってんじゃないの」
「いやいや、そんな」
官僚たちはみんなで苦笑いを浮かべた。
「官僚って型どおり」
と若杉さんは思った。

「現場の議論はすごい」
一橋大学3年の山根誠之さんは同様の場面で違った体験をした。自民党の外交部会に議員の代理として出席したときのことだった。若手議員と外務官僚が「教科書問題」について議論していた。議論は徐々に熱を帯び、若手議員が、「お前は韓国の手先か!」と罵倒した。この言葉にブチ切れた官僚はとっさに立ち上がり、「私ほど日本の国を思っている人間はいないっ!」と机を叩いて応酬した。「さすが現場の議論はすごい」と山根さんは感心した。

17時、若杉さんは井上議員とともに選挙区の錦糸町駅前にいた。有権者に自分がつくったビラを配る。議員は牛乳ケースでつくった台の上で演説した。

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