ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.226 [首長] 永藤 英機 大阪府堺市長 「歴史のまち〝堺〟から未来を創る」

〝歴史のまち〝堺〟から未来を創る〟
堺市長 永藤英機
JAPAN PRODUCER INTERVIEW vol.226

「ものの始まりなんでも堺」といわれるほど
イノベーションを起こしてきた堺。
百舌鳥・古市古墳群は
世界遺産にも登録されているぐらい有名です。
そんな堺市の未来の姿を永藤市長にお聞きしました!

< 素晴らしい日本を次世代に残したい >

ーまず、永藤市長が政治家、そして市長を目指されたきっかけを教えてください!

永藤市長:

2005年に沖縄旅行で平和祈念公園を訪れた時です。
そこには沖縄戦で亡くなった方々、日本人外国人合わせて20万人の方の石碑が並んでいます。それを見たときに「今の日本というものは平和だけれども、過去に苦難の時代を歩んだ人たちの上に成り立っている。だからこそ私たちはもっと素晴らしい日本を次の世代に残さなくちゃいけない」と思い、それができる手段として政治家を志しました。
ただ、私自身が育った家庭は政治と接点がなく、政治家を志したもののどうしたらいいのかわかりませんでした。
そのようなタイミングで2008年、橋下徹氏が大阪府知事に就任しました。
自分が大阪府に住んでいたこともありましたが、今この大阪が変わるタイミングでまずは自分の住む地域をよくしたいと思い、2011年に大阪府議会議員に立候補して当選をさせていただきました。
ただ、大阪の中心部でどんどん新しい改革が進んでいる中、堺市は大阪の中心部と比べてダイナミックな改革が進んでいないことを感じたんですよね。
そして、誰かがこの改革をやらなくてはいけないのならば、自分がやろうとのことで堺市長に手を挙げたことがきっかけです。

< 〝歴史〟のまち堺から〝未来〟を創る >

ー永藤市長の考える理想の堺市を教えてください!

永藤市長:

ちなみに皆さんは堺市ってどんなイメージを持っていますか?

ーやはり大山古墳をはじめ、堺刃物など歴史が深いまちというイメージが強いです。

永藤市長:

ありがとうございます。
皆さんがおっしゃるように、堺市のイメージといえば歴史だと思っている方々は多いでしょう。
しかし、今の堺市ってどんなイメージを持つかというと、全国の方々は堺市という名前をどこかで聞いたことはあってもイメージがしにくいのではないかと感じています。
だからこそ今、私は市長として『歴史のまち〝堺〟から未来を創る』ことを掲げています。
堺市の歴史は本当に堺市にしかない唯一のものです。
堺市は世界遺産にもなっている百舌鳥・古市古墳群、そして中世から近世の時代にかけて鉄砲や刃物など様々な国際貿易都市として発展してきた歴史を持っています。
この歴史を活かしながら、新しい技術やサービスをどんどん取り入れていくことで
未来を創り出すことによって今堺市に住んでいる方々はもちろん他の自治体に住んでいる方も堺市に住みたくなるように思えるまちが私にとっての理想です。

永藤市長とのインタビューの様子
インタビューの様子
(左:ドットジェイピースタッフ、右:永藤堺市長)

ー「歴史のまち〝堺〟から未来を創る」とありましたが、その想いに至るまで経緯などを教えてください。

永藤市長:

政治家を目指したときに、他の地域を知らなければ自分が暮らすまちの特性もわからないと考えました。大阪の本当の良さを知るため、バイクに乗って日本全国全ての県庁所在地を訪れました。
日本全国を回って大阪の特異性や各地方の特性を知ったあと、これからの大阪は世界を相手にやっていかなくてはならないと思い、世界地図を広げてこれから大阪のライバルになりそうな国を調べて、一か月かけて回っていきました。

ー色んな地域を回って見られて気づいたことはありますか。

永藤市長:

大阪は世界にも負けない可能性があるということに気づきました。
特に堺市は、大阪の中でも大阪市より深く長い歴史・伝統文化があります。
この歴史や伝統文化を活かすことこそが今必要なんじゃないかと思っています。
残念ながら、ずっと堺にお住まいの方は、この歴史を当たり前のように感じてしまっています。例えば古墳が周りにあるのは当たり前だし、世界遺産を目指す時も、「いつも見ている古墳が世界遺産になるわけがない」という方もいらしたことをよく覚えています。
同じ地域にずっと住んでいると価値があるものが当たり前になってしまい、その価値に気づきにくいということがあると思います。
だからこそ、堺市の魅力を再発見した上で、そこに新しい技術・サービスを入れながら新しい取組を進めることが今の着眼点です。

ー堺市の魅力を再発見するとありましたが、永藤市長の思う堺市の魅力とはどのようなものでしょうか。

永藤市長:

やはり唯一無二の歴史です。
歴史というものは後から創れないんですよ。
後から時代に合わせてこういうことをしようということはどの自治体でもできますが、
歴史を活かすということはそもそもの歴史が無いとできません。
そういう意味でも1600年前の百舌鳥・古市古墳群や、黄金の日日と言われた中世の時代は唯一無二ですのでこのような歴史こそが堺市の魅力となっています。
現在の堺市もそこから派生した精神性や文化伝統が根強く残っていますので、
そこを今後とも活かしていきたいですね。

百舌鳥古墳群写真
堺市 百舌鳥古墳群(堺市提供)

< 原点である歴史を紐解いて見えるもの >

ー〝歴史のまち〝堺〟から未来を創る〟ために打ち出された施策などはありますか?

永藤市長:

まずビジョンを共有するということを大事にしてきました。
私が市長に就任した時、市民の皆さんから「堺市としてどこを目指しているのか、何をやろうとしているのかわからない」との声をいただきました。市の職員の中でもビジョンが見えないということがあり、危機感を覚えましたね。
未来を創るためには市民の皆さん、職員の皆さんにもこのビジョンの共有がなされている状態になっている必要があります。
そのため、市政の大方針として【堺市基本計画2025】を定めました。
この計画では2030年を見据えながら2025年までに行っていく大方針を定めています。
予算を使う全ての取組はこの計画に基づいたものをそれぞれの目標数値を定めながら実行しています。

ー【堺市基本計画2025】の中に『未来を創るイノベーティブ都市~変化を恐れず、挑戦・創造しつづける堺〜』という文言があったのですが、ここに込められた想いを教えてください!

永藤市長:

近年よく、イノベーションという言葉が出ていますが、堺は昔からずっとイノベーションを繰り返してきた都市です。ものの始まりなんでも堺という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、これまで様々な海外と貿易を通じて交流する中で堺を玄関口として色んな新しいサービスや文化・技術が入ってきた歴史があります。それを堺の中で修繕・改善して日本全国に広めて来ました。
ただ、今は少し内向きになっているように感じます。西日本一の大都市大阪市が隣に存在するため、経済という面では太刀打ちできません。
そうすると、堺市に住みながら大阪市に働きに行く人が多くなってきます。
昔みたいに堺市が文化や流行の最先端であるという意識が少なくなってきているんですよね。
だからこそ改めて歴史を振り返りながら、「未来を創るイノベーティブ都市」としての方向性を打ち出していきたいと思っています。
もちろんこれからの未来の行動としてはカーボンニュートラル、DXを活用した取組、まさにこれからの未来に必ず活かさなければいけないところっていうものはありますので、
歴史と新しい技術をかけ合わせて化学反応が起きるような取組を行っていきたいといった想いを込めてこの文言を掲げました。

ー施策を考える上で大事にしている考えがあれば教えてください!

永藤市長:

なぜ堺市がその施策を行うのか、を考えることです。
例えば、堺市では自転車の施策を進めようとしています。
堺市には「シマノ」という世界的に有名な自転車産業の会社があるのですが、
なぜ堺市が自転車の施策を行うかというと、そのことだけではありません。
古墳時代に仁徳天皇陵古墳が造られるとき、鋤や鍬が大量に必要になったため
鉄の鍛造技術が発展しました。そこから平安時代には刀になり、中世の時代に鉄砲、包丁になり、明治時代にはその技術が自転車の修理に役立ちました。
今でも堺市は自転車部品の一大生産地なのですが、このように歴史を紐解くことで堺市がなぜその取組をするのかの意味を感じていただけるかと思います。

< 未来の堺市へのロードマップ >

ーこれから先、例えば5年後10年後30年後の堺市はどのような都市であるとお考えですか?

永藤市長:

やはり目指すところは「イノベーティブ都市」です。
まず、2025年には『未来を創るイノベーティブ都市』を目指しています。
着実に堺の魅力を保ちながら変化をし、常に最先端を走っている都市になるようにしていきます。
次に2030年はSDGs未来都市です。
多様性を認め合い未来を創造する都市・堺を目指しています。
そして2040年には『堺グランドデザイン2040』を策定しています。
20年後の街づくりをどうするかをグランドデザインに示しました。
例えば堺市の中心部である堺東駅が高架化され、踏切が無くなって電車が上を通るようになります。駅が上がり、活用できる土地が増えるため中心部が一変するでしょう。
2050年はまさしくカーボンニュートラル実現を目標に、『全ての人が幸せに暮らす、持続可能な環境イノベーション都市』を目指しています。
しかし、これからの社会がどうなるのかをはっきり読める人って誰もいません。
でも、どんな世の中になってもやっぱり自分で行動できる、自分の考えをもって
新しいものを生み出して行く都市は、恐らくいつの時代になっても通用すると思います。
今だけ成功するのではなくこれからもずっとイノベーティブを生み出し続ける都市、
常に最先端を生み出し続けるまちであって欲しいですね。

ー最後にこれから政策立案コンテストに臨む学生たちにメッセージやアドバイスをください!

永藤市長:

ふたつお伝えしたいと思います。
まずは外を見るということを大事にしてください。
例えば堺市の政策を考える場合なのですが、
堺市の内側だけ見ているだけではアイデアは浮かんできません。
今の世の中、日本もそうですが世界は目まぐるしく変わっていっています。
堺市だけが独立して行政運営ができているわけではありません。
行政運営とは様々な兼ね合いの下、成り立っています。
例えば周辺自治体との関係性や今のウクライナ・ロシア情勢のような世界的な事象も密接に関わり合っているんですよね。
だからこそ外を見て考える。自分のことを知るためには外を見た上で、それが本当に世の中の流れにあっているのか、正しいのかを客観的に見る視点を持つことが必要だと思っています。
そして政策を実現するまでのルートを考えることを大事にしてください。
特に学生の皆さんは政策を考えることに慣れていない方が多いと思いますので、
「実際にこういうまちだったらいいな」というのを中心に考えがちですが、
どうやって実現するのかまでしっかりと考えてみてください。
実際に政策を実行する場合には、市民の皆さまにはもちろん、様々な機関や団体の理解を得る必要があります。
自分の考えた政策が賛同されるためには、「こんな政策があればいいな」だけではなく、じゃあそのためにはどうやって実現するのかまで考えて提案されると、皆さんが提案される内容はよりリアリティがあり、多くの方に響くのではないでしょうか。

(インタビュー:2022-03-28)

プロフィール

■生年月日 昭和51年7月13日
■略歴
平成11年 大阪府立大学経済学部卒
平成11年 情報処理会社勤務
平成23年 大阪府議会議員(1期)
平成27年 大阪府議会議員(2期)
令和 元年 堺市長

※プロフィールはインタビュー時のものです。
永藤市長とのインタビューの様子
2022年3月28日 堺市役所にて
(左:永藤市長 右:ドットジェイピースタッフ)

関連記事
  • 酒井市長プロフィール用
    Vol.240 [首長] 酒井了 大阪府貝塚市長 「自利利他で交流を描く貝塚市」

    ジャパンプロデューサーインタビュー

  • 髙島市長プロフィール用
    Vol.239 [首長] 髙島崚輔 兵庫県芦屋市長 「『好き』を探究する学びの実現を公立で」

    ジャパンプロデューサーインタビュー

  • Vol.238[首長] 宮本一孝 大阪府門真市長 「相手のことも自分事のようにとらえ、支え合うまちを目指して」

    ジャパンプロデューサーインタビュー