ジャパンプロデューサーインタビュー
Vol.240 [首長] 酒井了 大阪府貝塚市長 「自利利他で交流を描く貝塚市」
〝自利利他で交流を描く貝塚市〟
貝塚市長 酒井了
JAPAN PRODUCER INTERVIEW vol.240
二色の浜や、泉葛城山など豊かな自然に囲まれ、
歴史情緒あふれる貝塚市。
商工業の発展と先進技術の普及にも力を入れている
貝塚市長にお話をお聞きしました!
< 政治の道に進むきっかけ >
ー市長を志したきっかけは何ですか?
酒井市長:
私は元々、大阪府貝塚市出身なのですが、大学、大学院は早稲田に行っていて、その後は国土交通省の職員として全国各地で働いていました。
そのような中で、次の貝塚市の市長選挙まであと2か月となったときに前の市長さんが次の選挙には出ないということになり、急遽私が選挙に出ることになりました。
実は以前から、いずれは帰ってきて地元に貢献してほしいというお話をいただいていました。でも、前の市長さんが続けておられる間は私の出番はないと思っていたんですよ。それが急遽、市長が出馬しないという話になり、僕も心の準備ができなかった部分はありました。
でも、私も色々なところで経験を積んできていて、その経験を貝塚市の課題に対して上手に役に立てられるだろうとも思い、ある意味で運命だと感じていました。
ー今まで積んできた経験や市長になることを運命だと思った理由を教えてください。
酒井市長:
国土交通省のときに、埼玉県の本庄市というところで3年弱ほど副市長として仕事をしていました。また最後は平成30年の西日本豪雨の復旧復興の関係で、水害被害のあった岡山県倉敷市の真備町に出向していました。こうした自治体との経験もあって、市長の仕事というのを身近に感じてもいました。
また、僕の座右の銘は「自利利他」です。 自利は自分の得意とする部分で他人を利するという意味です。私自身は子供の頃から地図オタクだったんですよ。 本当にまち歩きとか、地図が大好きでした。それで学生時代は都市計画を勉強して今の国土交通省に入ったんですよね。
自分で言えば、まちづくり、都市計画というところが1番得意なので、それでふるさとのお役に立てるのであればこれはもう、人生、冥利に尽きるなというふうに思いました。
< 30年後の理想の貝塚市と課題 >
ー酒井市長の考える30年後の理想の貝塚市とその課題を教えてください。
酒井市長:
貝塚市には2つの課題があります。そのような苦しい状況下でも、しっかり持続可能な形で発展する町、それが理想の貝塚市ですね。
貝塚市の大きな課題として、人口減少と少子高齢化、この2つの課題があります。人口減少からまず申し上げると、貝塚市はピークの時は人口10万人ぐらいいたのですが、今は人口8万3000人ぐらいまで減ってきて、その内訳はいわゆるその亡くなっていく方とその生まれてくる方の人口の自然源だけではなく、転出と転入の差、つまり引っ越して貝塚市を出ていく方が数が多くて、自然源より、実は転出源の方が倍ぐらいで減ってるんですね。人口の転出源が大きな原因になっています。少子高齢化に関して言うと、当然、65歳以上の高齢者の割合が高まっていくんですけど、中でも団塊世代と言われる昭和22年から24年に生まれた方が、ちょうど24年生まれでいうと、今年75歳になる年です。 そのため、75歳以上の人口がこれからもっと増えていきます。そのため、どこに焦点を当てて政策を展開していくか考える必要があります。
< 理想を実現するための政策 >
ー理想の貝塚市を実現するために行なおうと考えている政策はありますか?
酒井市長:
人口減少への対策としては、貝塚市を夜だけでなく昼もにぎわう街にしていくことが重要です。これを実現するためには若者の定住を促す必要があり、企業の人材確保と若者定住を合致させるために、奨学金返還支援制度を導入しました。また、20代や30代のアンケート結果から、貝塚市を離れる理由として「賑わいがない」という声が挙がったため、主要駅周辺の賑わい創出に注力しています。具体的には、駅前広場や改札口の整備、産業用地への投資を行っています。さらに、観光振興により、貝塚市外からの人口増加にも力を入れており、来年開業100周年になる水間鉄道や、関西でも有数のドローン屋外飛行場かつクリケット競技場である貝塚市立ドローン・クリケットフィールド、市立天文台などを活用したきっかけ作りから貝塚市の知名度向上を図り、交流人口を増やし、定住人口につなげていきたいと考えています。
高齢化に伴う課題に対しては、介護予防や認知症予防が挙げられます。貝塚市には、大阪河﨑リハビリテーション大学という介護予防や認知症に特化した大学や大学院があり、そこで勉強しながら健康寿命を延ばす取り組みをしています。ちょうど来年の大阪関西万博のテーマが、「命輝く未来社会のデザイン」で、健康や命に焦点が当てられます。貝塚市には、このテーマに関連するリハビリテーションの専門大学や、高齢者向けの流動食を作る民間企業の工場があります。だからこそ、うまく連携することによって、万博のテーマに繋げていきたいと考えています。また、公共交通の充実によって、車に頼らず外出が楽しくなり、健康寿命が延びることや社会参画の重要性が強調されています。貝塚市では、公共交通の整備や広域連携による施策などを通じて、人口減少や高齢化といった課題に取り組んでいます。また、PFIを活用した新しい行政の取り組みや、他自治体とのノウハウ共有により、持続可能な発展を目指しています。
< 政策に反映されている経験 >
ー政策に反映されている市長の経験を教えてください。
酒井市長:
私は、22年にわたる官僚としての経験、国内外の様々な地域での勤務、国土交通省から出向して従事した外交官としての活動を経て、市政に対する豊富な経験と知見を蓄積してきました。東日本大震災時の仙台市や北部九州豪雨時の福岡県庁での災害対応、さらにはブラジルでの外務省出向など、幅広い場所での勤務経験があります。これらの経験を貝塚市の防災対策やまちづくりに活かし、災害に強い街づくりを目指しています。また、駅前の安全と美化に関する取り組みにも、国土交通省での踏み切り法律担当者としての専門知識を生かしています。
私は、これまでの経験全てが現在の仕事に役立っていると感じており、グローバルな視点や多様な自治体での勤務経験を市政に反映させています。
< 若者へのメッセージ >
ー学生時代の今に繋がっている経験や後悔はありますか?
酒井市長:
私の場合は元々好きな分野が決まっていて、高校時代から都市関係のことをしたいなと思っていたので、間違っていなかったかなと思います。
実は、私の人生観に影響を与えた高校時代の恩師の教えがあります。
タクシーに乗るときは当然、乗る前から行き先を決めているよね。乗ってから行き先は決めないよね。 あのカーブを曲がる時も、目の前見ていたらフラフラするけど、カーブの先の方に視点当てていたら順調に曲がれるよね。だから、目標を早く決めなさい。
こうした教えがあったので、そういう意味では早く目標を決めてほしいです。自分が得意な部分、自分が活かせる分野はなんなのか、そこに行き着くためにどういう勉強をすればいいのかを自己分析してください。
やっぱりね、自分の不得意の分野を避けて、なんかこういう生き方しかできないとかではなく、自分がしたいことはなんなのか、そのために何を克服すればいいのかを考えて欲しいです。そういった感じで未来に視点をおいて考えて、生きていってほしいなと思います。
後悔という意味では仕事をし出すと、どうしてもその1つの道に本当に絞られるから、もっとこんなことやってみたかった、あんなことやってみたかったというのは、なかなか社会人ではできないんですよ。
だから、 学生時代だったらアルバイトはもっとやっておくべきだったかなと思ってます。私は塾の講師、家庭教師、試験監督とか勉強系のアルバイトしかしてこなかったので人生を豊かにするという意味ではもっと色々経験しておくべきだったかなというふうに思います。
ーこれからの日本を担っていく若者への激励、メッセージをお願いします。
酒井市長:
これからの日本を担う皆さん、現代はグローバル化が進み、文化や経済が国境を超えて繋がっています。この大きな流れの中で、日本が持続的に成長していくためには、皆さん一人ひとりが世界へ飛び出し、新たな挑戦を恐れずに取り組むことが求められています。その際、自分自身の考えをしっかり持ち、世界各地の異なる背景や文化を理解し、尊重することが大切です。異文化の理解は豊かな共生社会への第一歩となります。
私自身の経験から言うと、様々な場所での勤務を通じて、自分の生まれた場所の価値を外から見る機会があり、それが自分にとってとても貴重な体験でした。生まれ育った環境から一歩出ることで、見えてくる新たな価値観や発見があります。特に、大学生や若い世代の皆さんは、就職活動だけでなく、さまざまな経験を積むことで、自分の生き方や目指す将来に合った仕事を見つけることが大事です。
就職は、企業に選んでもらうだけではなく、自分自身で企業を選ぶ過程でもあります。自己分析を通じて、自分の得意分野や社会に対してどのように貢献できるかを見極めることが大切です。「自分こそが適切な会社を選ぶ」という積極的な姿勢で、自分のキャリアを形成していってください。
皆さんの勇気ある一歩が、日本や世界をより良い方向へと導く力となります。グローバルな視点を持ち、異文化を尊重する心を持って、広い世界へと挑戦してください。私は皆さんが新しい課題にチャレンジし、自分らしい価値ある経験を積むことを心から期待しています。
(インタビュー:2024-02-10)
プロフィール
■生年月日
昭和50年3月28日
■学歴
平成10年3月 早稲田大学理工学部卒業
平成12年3月 早稲田大学大学院理工学研究科修了
■職歴
平成12年4月 建設省(現国土交通省)入省
平成23年7月 埼玉県本庄市副市長就任
平成31年4月 岡山県倉敷市技監就任
■略歴
令和4年 2月 貝塚市長就任
※プロフィールはインタビュー時のものです。
2024年2月10日 zoomにて
(中央上:酒井市長 その他:ドットジェイピースタッフ)