ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.117 [首長] 石阪 丈一 町田市長 「“約束された人生なんてつまらない”という言葉に動かされています。」

市長

町田市長 石阪 丈一
所属 町田市長
選挙区 東京都町田市

 

市長になろうと思ったきっかけをおしえてください


もともと私は横浜市の職員をしていました。横浜市では、横浜市長の任命で市職員が区長を務めるのですが、私も港北区の区長の職につきました。
区長をしていると行政のほとんどが見えてきて、日々政治や行政のあり方について考えていました。
本当の政治家と異なっているのは、選挙を経ているかいないかだけではないかと思います。
そんな折に「町田市の市長選挙に出馬しないか」と声をかけられました。当時は、横浜市の職員としてその後の地位も約束されていましたので、そのまま安定の道を進むか、リスクをとって選挙に出馬するか正直悩みました。最後の一押しは娘の
「約束された人生なんてつまらない」
というひと言でした。



市長選の難しさを教えてください


これは市長を勤めてわかってきたことなのですが、当時、私が当選すると思っていた人はほとんどいなかったそうです。立候補している本人にはやる気を持ち続けてもらう為に、「いけそうだ!」と伝えられるばかりで、情勢は伝えられませんでした。

当時を分析すると、保守派が四名立候補し、知名度のある方ばかりで、私の知名度はほぼゼロでした。しかも、そのなかで保守派の票を飛び抜けて獲得しなければ、革新派の候補に勝つことはできません。
ですから、結果がついてきたからいいようなものの、今思えば娘のひと言で本当に無謀な選挙戦に出馬したなと思います。

出馬をしないということは、既成の状態に満足することを意味していました。
政治の世界では、リスクをとるような決断をしなければ既成の概念を打ち破ることはできないと思っています。ですから、出馬へ背中を一押しした娘の言葉「約束された人生なんてつまらない」と、私の信念のひとつである「今までの既成の概念では政治はよくならない」は繋がっていると言えます。



市長としてのやりがいを教えてください


市長のやりがいは、政治家としてのやりがいと、会社の社長としてのやりがいがあると考えています。
政治としてのやりがいは、今までにない政策を実行することです。その政策が既成の概念にとらわれておらず、既存の利益を得ている人たちをある程度犠牲にするかたちになっていても、今まで利益を受けていなかった市民に働きかけることができれば、強いやりがいを感じます。
例えば待機児童の問題を解決する為に保育園の建設費の補助を行うなど、全国でも初めての政策を行うことで待機児童が減っていった時には大変やりがいを感じました。

次に社長としてのやりがいですが、こちらは簡単で市職員の満足度を最大化させることです。
会社というものは基本的には永続することを前提としていて、自治体にも同じことが言えると思います。
だとすればそこで働く人間は移り変わっていきますので、そこで働く人間が前の人よりも少しでも優秀になっていかなければ組織としての成長はありません。
ですから、職員の育成には力を入れています。
最近少しずつ効果が現れてきたので、うれしく思っています。



市長をしていて辛いことを教えてください


やりたいことと辛いことはバランスを保たれていて、いいことの後には悪いことが、悪いことのあとにはいいことが訪れると思っています。
やりがいを生みだす為には、それだけの苦労が必要だと思っています。

市の一般職員をしている時には仕事のことは仕事の時にしか考えていませんでしたが、経営者としての立場になると、寝る直前まで仕事のことを考えてしまいます。
また、休暇は月に一度取れればいい方です。
ですので精神的には24時間365日ずっと仕事をしている感じですね。いつでも市長として気を抜けないことも辛いですね。いつも笑顔でいないと「市政がまずいことになっているのではないか」と思われかねません。



政治家に必要な資質とはなんでしょうか


資質は人によって様々ではないかと思いますが、私の場合、自分自身にも他人にも嘘をつかないことだと考えています。
政治家は常に攻撃の対象です。多くを語れない時にも、以前に言ったことと現在行っている事に矛盾が無いようにしなければなりません。そして、組織内で起こったまずいことも、隠さずに表に伝えなければなりません。
そうしなければ、政治家として活動していくことはできないでしょう。

最近の例を出せば、町田市内のゴミ処理場の立地について、4年もの間、審議会などの話し合いの場を公開してきた他、情報発信をしてきました。決定のプロセスまで全て公開することによって、結果を発表した後にも「寝耳に水だ」という批判はありませんでした。



若者へのメッセージをお願いします


自分自身の限界を決めないということが重要です。目標は高く持って欲しいと思っています。
いつどんなチャンスがめぐってくるか分からないので、積極的に夢を追い続けて欲しい。
夢を追うのを辞めてしまうと、気持ちから年をとってしまいます。夢を追っているうちは若くいることができます。みなさんは若いのですから、どんどん挑戦してください。



(インタビュー:2013-02-22)


1971年 横浜国立大学経済学部卒業
1971年 横浜市総務局就職
1979年 総合研究開発機構
1982年 横浜市企画財政局
1996年 (株)横浜国際平和会議場
2002年 横浜市総務局緊急改革推進本部理事
2004年 横浜市港北区長
2006年 町田市長就任
※プロフィールはインタビュー時のものです。

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