ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.191 [首長] 大井川 和彦 茨城県知事 「スピード感を持ち、失敗を恐れず挑戦」

〝スピード感を持ち、失敗を恐れず挑戦〟
茨城県知事 大井川和彦
JAPAN PRODUCER INTERVIEW vol.191

< 「自ら変わる勇気を持つ」について >

ー信念の一つに掲げていらっしゃる「自ら変わる勇気を持つ」について詳しく教えてください。

大井川知事:

私のキャリアは、旧 通商産業省(現 経済産業省)から始まり、マイクロソフト、シスコシステムズ、ドワンゴを経て茨城県知事になりました。自分から環境を変えることが、自らの成長につながっています。
同じところでずっと我慢しているのではなく、チャンスがあれば自ら厳しい道に飛び出していったことが結果として良かったと思います。

まず、経済産業省にいた時、一度やろうとして失敗した法律を 2 年目で完成させました。最初に始めた時、そもそもなぜ法務省ではなく、経済産業省がやるのかという話もあり、また当時の法律学の常識から見てもありえない法律でした。しかし、日本では「ありえない」ことが常識であっても、海外ではできることもあります。
法律は人間の生活の道具でしかないのに、法律が絶対になってしまい、人間の生活に必要なものを逆に無理だと決めつけてしまいます。この考え方から、海外でもやっているし便利だからやった方がいい、それによりどのような弊害が出るか、合理的に洗い出して一つずつ潰していけばいいと考えて、実現させることができました。

現在、知事に就任して 4 年を過ぎました。最初の一年目からものすごい勢いで色々なことを始められたのも、バックグラウンドとして様々な経験があったからです。
各部署の目標設定の仕方をとっても、民間企業でのやり方、外資系でのやり方を知っていたからこそ発想できました。
そのような様々な経験をして、自ら変わっていくことが、新しい未来を切り拓くということなのだと思います。

< 今後の茨城県について >

ーこれまでの経験を踏まえて、今の茨城県をどのようにしていきたいですか。

大井川知事:

ビジョンとしては、経済的な豊かさがすべての前提になるので、産業を強くして自立して経済が回っていくことが大事だと思います。
その次に、弱者をしっかりと支えられるような医療や災害対応などの安心安全です。
それから未来の人財を作ることも大事ですし、茨城県は素敵だなと思える場所を主に観光面で作っていくことも重要で、それを目標としています。

< 知事の行政改革について >

ービジョン達成や県庁内をより活発化させるため、どのような点に力を入れられましたか?

大井川知事:

茨城県庁職員は元々仕事に対する目的達成意識を持っています。そこでさらに大事にしたことは、正しい目的意識を持ってもらうことです。

例えば、目標も曖昧で事後の解釈によって達成と言えるよう設定したり、その難易度も最初から、ある程度達成できることが見込めるよう控えめにして、誰からも文句言われないことが最終目標になっていることもあります。
そこで、私は、結果が出ないことを恐れる行政ではなく、ハッキリした目標を作ることによって、結果を出すことに集中できる行政を目指すよう環境を作りました。

しっかりと茨城県民の将来を考えて、10年後、20年後に県民がこの行政によって、いい方向に向かったと実感できるようにするために、何をいつまでにやらなければいけないか逆算して、ハッキリと目標を設定しています。

< 茨城県の教育改革について >

ー新たな人財育成の一つとして行っている教育改革について教えてください。

大井川知事:

これからの時代は右肩上がりでもないし、日本の国際的地位も大きく変わる可能性もあるし、決してバラ色ではないと思います。少子化が進むし、産業競争力も落ちている上に、国の借金も桁違いになっていて、インフレになったら国の財政もあっという間に破綻する崖っぷちで私たちは生きています。
このような状況の中で、さらに気候変動や中国の台頭、人口減少など、これからの若い人たちは僕たちが経験した以上に非常に難しい時代を生きないといけないと思います。自分たちで生きる力を身につけられる、そういう教育を提供しなければならないと思っています。

自分たちらしく生きるための教育というのは、金太郎飴のようにみんなが同じことをやることではなく、自分の個性や自分のやりたいことを打ち出し、自分をどのように差別化するか考えさせる教育です。要するに、他の人と私はここが違う、だからこの特長があるんだと言える人財を育てることだと思います。

これからの時代で大事なことは、一芸にものすごく秀でている人です。このような人たちが可能性をつかむ、あるいは新しい社会を変える原動力になってくるのではないかと思います。そのような人たちが才能を伸ばせるような教育環境を公立高校といえども作っていきたいと思い、友部高校やつくば工科高校の専門的な高校や中高一貫校など特色ある学校を増やしています。没個性ではなく、個性のある人財に育って、これからの難しい時代を生き抜く力をつけていただきたいと思います。

< スピード感をもって >

ー若者に対してメッセージをお願いします。

大井川知事:

これからの時代、経済も人口も、国際社会も、あるいはエネルギー問題、気候、自然環境もすべて大きく変化していくことを前提として動いているので、スピード感がまず大事です。失敗をしても構わないから、失敗を恐れずにスピード感をもって前に進むことです。
さらに大事なことが、選択と集中です。もしかしたら間違っているかもしれないけど、何が重要で何がこだわるべきポイントかをしっかりと決め、集中的に力を入れて物事を進めると、結果がついてきます。たとえ間違っていても、そこからも色々学習して軌道修正をすることができます。
また、これからの変化の激しい時代において、与えられるのを待っているのではなく、自ら変わっていく勇気を持ち、自分の未来を切り開いていくことが重要です。組織や会社に就職し一生懸命に仕事をして、認められて出世するという選択肢だけが人生ではないことをしっかりと意識してもらいたいと思います。

さらに合理的にものを見る、考える、あるいは変な偏見なしに、本質を見極めるという努力の訓練をやっておくといいと思います。世の中で言われている常識には、結構いい加減なものもあります。
例えば、法律は何のためにあるのか考えた際に、法律でこのように定めてあるからできませんと全部はじいてしまうのではなく、法律をそのように変えて、できるようにした方が、世の中が便利になるのではないか。世の中を便利にするためのルールであるはずが、そのルールが逆に人間の未来の芽を摘んでしまうことは、おかしい。このような常識が、世の中には沢山あるので、疑ってかかることで、逆に新しいビジネスチャンスや新しい政策のテーマなどが思いつくと思います。

(インタビュー:2021-11-25)

プロフィール

■生年月日 昭和39年4月3日
■略歴
1964年 茨城県土浦市生まれ。
1988年 東大法学部卒業、同年、当時の通商産業省に入省。
1996年 ワシントン大学ロースクール卒業。
2003年 マイクロソフトアジアに入社、執行役員を務める。
2010年 シスコシステムズの専務執行役員パブリックセクター事業担当に就任。
2016年 ニコニコ動画の運営会社であるドワンゴの取締役に就任。
2017年 茨城県知事選挙で初当選。現在 2 期目を務める。

※プロフィールはインタビュー時のものです。
大井川知事とのインタビューの様子
2021年11月25日 茨城県庁にて
(中央:大井川知事、左右:ドットジェイピースタッフ)

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