コラムcolumn

2022/2/15 ジャパンプロデューサーインタビュー
Vol.198 [首長] 上村 一郎 香川県東かがわ市長 「誰もが知る、ワクワクするまちづくりを市民主体で」

〝誰もが知る、ワクワクするまちづくりを市民主体で〟
東かがわ市長 上村一郎
JAPAN PRODUCER INTERVIEW vol.198

香川県の東端に位置し、
はまち養殖の発祥や和三盆糖などで知られる地域です。
そんな東かがわ市の市長である
上村一郎市長にお話をお聞きしました!

< 誰かの役に立ちたい >

ー東かがわ市長を志したきっかけを教えていただいてもよろしいでしょうか?

上村市長:

端的に言いますと、東かがわ市の役に立ちたかったからです。私の中では、「人の役に立つ」ことが一番の価値観としてありました。
最初の契機は、私が中学2年の時に起きた阪神淡路大震災でした。神戸や大阪に住む親戚宅にお見舞いに行った際、自衛隊の方々が災害派遣で来ていた姿を見て、「自衛官になって人の役に立ちたい」と思ったのが始まりです。大学卒業後は、広告代理店に入りました。この時代は、SNS・ブログの台頭により情報が溢れ、自分のことを知って欲しい、つくったものを見てもらいたいと希望する人々にとっては情報発信が難しくなった世の中となっていたのです。「そうした人たちの役に立ちたい」という想いからの行動でした。国会議員の秘書になった時も同様です。心底惚れて、「この議員の役に立ちたい、この人が引っ張っていきたいと思っている日本や香川県の役に立ちたい」と思い、秘書になりました。

市長を志したのも、東かがわ市の役に立ちたいという想いからです。
自衛隊に入った16歳の時に香川県を離れ、国会議員の秘書として35歳の時に戻ってきました。20年ぶりに東かがわ市に帰り、一番に感じたのはまちの空気の変化です。20年の間に人口減少や少子高齢化が進み、まちの空気が沈んでいるのを感じました。更には、久しぶりに会った人と話していても、「うちのまちってなんもないけん」とか、「東京でちゃんとした会社勤めていたのになんで帰ってきたん」と言われる始末です。大人がそれを言ってはいけません。この空気を変えたいと思い、今まで経験してきた仕事をいかせる分野はどこかを考えるようになります。東かがわで生まれ育ち、自衛隊、広告代理店、国会議員秘書を経験した自分だからできること。それは、その中でも市長だなと考え、市長になって東かがわの役に立とうと思ったのが始まりです。

< 誰もが知っている、ワクワクするまち >

ーどういった東かがわ市をつくっていきたいかを教えてください。

上村市長:

私の描く東かがわ市のビジョンは、「誰もが知っている、ワクワクするまち」です。
「誰もが知っている」というのは、単純に東かがわ市の知名度をあげていくということも含みます。例えば、東かがわ市がネットで取り上げられれば、広報宣伝の効果があります。しかし、実際一番うれしいのは市民の皆様です。東かがわ市が外部で取り上げられ、名前が外に出ていく事で市民は嬉しく感じます。時々、東かがわ市が全国ネットで取り上げられますが、それを一番見ているのは市民の皆様です。「あそこのおっちゃんがちょっと調子のええこと言っていた」や、「あそこの娘が写り込んでいた」等で盛り上がることに繋がります。そうした環境を作っていきたいのです。
「ワクワクするまち」に関して、「ワクワク」を定義するなら、「やってくる未来に対して、人々が喜びや期待を感じること」でしょう。これから東かがわ市って何が起きるのだろうとか、新しいあれは楽しみだなという期待感を持てるようなまちを創りたいのです。
このビジョンに基づいた政策をとっていく事で、市民の皆さんが前を向き、上を向けると考えています。大人が子どもの前で「このまちには何もない」というまちに人は残らないし、戻ってくれないし、来てもくれないでしょう。まずは、この雰囲気を変えていきたいのです。

ー周囲の評価、という点がシビックプライドに繋がるということでしょうか。

上村市長:

「このまちには何もない」という人がいるのは、何も東かがわ市に限った話ではありません。しかし私は、そう言ってしまう原因は、物理的なものではないと思っています。
好きになりなさいと言われても、なかなか好きにはなれないものですが、周囲からの評価を聞くと、考えは変わっていくものです。例えば、失敗をして自信なくした際に「元気出せよ」と言われても元気を出せるわけではないですよね。しかし、「君の考えは良かったよ」という周囲からの評価があれば、自己評価は上がっていきます。それはまちも同様で、周囲から、東かがわの情報をよく見るようになったとか、まちの取組が外に取り上げられる状況になれば、市民の満足度は必ず向上していくと考えています。
好きになれば、必ず関心を持つようになります。当然、好きになるために先に関心を持ってもらうということもあると思いますが、両面でしていかなければと感じています。

< 市民発のまちづくりを加速させるために >

ー理想の東かがわ市の実現に向けて力を入れて取り組んでいる政策について教えてください。

上村市長:

まちづくりやこれからの東かがわ市をどうしていくのかを描く点においては、行政のみでなく、市民の皆さんそれぞれも立ち上がっていかなければならないと考えています。
地域活性・地方創生と言えばこのまち、とピンとくるまちがあると思いますが、その実の8割は民間発です。民間が立ち上がり、フットワークよくやっていき、そこに行政がフォローする形が多いです。市長や行政は私たちに何をしてくれるのだろうか、というスタンスから変われなければ、まちは下向きになったままですし、これからの時代、行政がフォローできる範囲は更に狭くなっていきます。地方創生はいかに市民の皆さんにその意識を持っていけるかが肝要です。東かがわ市役所も市民もそうですが、単独でどうこう進められるものではないからです。
そのための施策の一つが「わくわく課」です。これは市役所外組織で、組織運営に市役所は全くお金を出していません。こうした事業をしたいということになれば、事業者間を繋いだり、行政の有するリソースの提供をしたりという形でサポートしています。だからこそ、フットワークよく、市民主体となって動くことが出来ているのです。

ー市民の主体的参画に向けた取組で重視している点は何でしょうか。

上村市長:

市民の市政参画は、時間がかかるものではありますが、一番肝要なのはそれが事業として成り立つかどうか、お金を稼いで事業として自走できるかという点。
今までのまちづくりはボランティア的要素が強くありました。しかし、その中心を担った人が退いた瞬間に一気にしぼむ事が多々あります。また、ボランティア精神でしていると、自分がそうだからと言って、周囲にもその精神を強いる可能性もあります。そうなると、結果として協力者がうまれにくくなってしまいます。まちが良くなるためには地域経済がいかに自立して回っているか、継続性を有しているかが大事になるのです。
東かがわ市に動物園がありますが、そこはホワイトタイガーを名物としています。また、市内には「とら丸」という菓子を製造する和菓子屋があります。この二つに着目したわくわく課の発案で、「白とら丸」というコラボ商品を開発しました。様々な自治体で街の名産を食品とコラボして売り出すケースは多いですが、長続きしない事が多いです。それは、売れないことで継続性が担保できないからです。そのためこの商品においては、ものを売るというメーカーの目線を重視して企画されましたし、実際にメディアにも取り上げられ、売れています。

ー人口減少、少子高齢化が進んでいく中でどう取り組んでいくのか、市長の考えを教えてください。

上村市長:

東かがわ市の人口は、現在の2万8千人から2040年には2万人を切るとも言われています。人口を増やすことはもう不可能に近く、減ることを前提とした政策を組んでいかないと大事なものを見失う可能性があります。
行政として、その社会に向き合うに際して大事になるのは、新たに発生して来る社会的ニーズに対して、どれだけ民間企業や市民と課題を分かち合えるか、そしてその環境をいかに行政が整えられるかという点です。行政が引き取ってしまうと富の再分配ができなくなりますし、何より抱えられなくなった時に、周囲に抱えてくれる事業者がいなくなることが一番怖いのです。そうならないためには、地域内の事業者が動けるように、また、地域外の事業者が地域内で関われるように環境を整えていく必要性があるのです。

< 行政に頼らず、行政を動かすには >

ー最後に、政策立案コンテスト参加者に向けてメッセージをお願いします。

上村市長:

行政に頼らず、行政を動かすにはどうしたらいいかを是非考えてもらいたいと思います。
行政ありきでスタートするまちづくりには、事業の継続性が欠けていたことが要因となる失敗事例が、全国的にも多くあります。
また、行政の役割や出来ることは年々小さくなっていきます。行政が全て抱えるという前提を崩さないといけません。政策そのものが良いものだとしても、それを実行するのは誰なのか、そしてその予算は現実的なものなのかを改めて考えてみる必要があると思います。見える未来をどこに見定めるかが大事になるのです。社会課題の解決に向けた施策を考えるに際しては、その実現性という部分に特にこだわってほしいです。

(インタビュー:2022-01-19)

プロフィール

■生年月日 昭和55年6月10日
■略歴
平成 8年3月 大内町立大川中学校卒業
平成 8年4月 陸上自衛隊入隊
平成13年3月 陸上自衛隊退職
平成15年4月 中央大学法学部政治学科入学
平成19年3月 中央大学法学部政治学科卒業
平成19年4月 株式会社電通パブリックリレーションズ入社
平成27年3月 株式会社電通パブリックリレーションズ退社
平成27年4月 国会議員秘書(香川県)
平成30年3月 国会議員秘書を退職
平成31年4月 東かがわ市長就任

※プロフィールはインタビュー時のものです。
上村市長とのインタビューの様子
2022年1月19日 zoomにて
(上:上村市長 下:ドットジェイピースタッフ)

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