ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.200 [首長] 桂川 孝裕 京都府亀岡市長 「世界に誇れる環境先進都市を目指して」

〝世界に誇れる環境先進都市を目指して〟
亀岡市長 桂川孝裕
JAPAN PRODUCER INTERVIEW vol.200

豊かな自然に囲まれ、環境先進都市として
SDGs未来都市にも選定された亀岡市。
そんな亀岡市の市長である
桂川孝裕市長にお話をお聞きしました!

< 今の亀岡市を創っている〝志〟 >

ー政治や行政に関わろうと思ったきっかけを教えてください。

桂川市長:

私は岐阜県の東白川村出身で、元々この亀岡市とは縁もゆかりもありませんでしたが、東京農業大学の造園科を卒業し、京都府立農芸高校で教鞭をとったことがきっかけで亀岡市とご縁をいただきました。

教員をしている中で、第四代亀岡市長であった谷口義久市長と出会いました。ちょうどその時、京都国体の開催をきっかけに亀岡市がスポーツ公園(現 亀岡運動公園)を作ることになっていたのですが、当時、造園に関する専門的知識がある亀岡市職員がいなかったため、私に声がかかり、教員を退職して市の職員になりました。
父が行政の仕事をしていたこともあり、私も「まちづくりをしたい」と思ったことが政治・行政の世界に入ったきっかけです。

ー市長はどんな想いで環境先進都市を目指そうと思われたのでしょうか?

桂川市長:

私は自然が好きですし、その自然を守っていくことが大事だという想いがあったことと、豊かな自然がある亀岡市に住んでみて、この自然を守り、次の時代に引き継いでいきたいなという想いを持ちました。

また、同級生も親戚も誰もいない亀岡市で自治体職員になったのですが、その中で、地元の青年会議所に所属し、さまざまなまちづくり活動をしてきました。
ちょうど、1999年に『20年後の亀岡市のビジョンをつくる』といったプロジェクトがありました。そこで私がプロジェクトメンバーに選抜され、まちの分析や亀岡市の資源などを勉強する中で、亀岡市の魅力をとても感じました。しかしその反面、私の中で亀岡市の魅力があまりにも活かされてないと感じました。

そして、この亀岡市が「田舎」という言葉だけに集約されてしまい、まちの良さが引き出されていないことを感じました。だからこそ、それを実現させるため、まず自分が政治の世界に入って、まちを動かしていこうと思いました。

亀岡市はたいへん自然が豊かで、農業が盛んな地域です。また、歴史・文化も豊かです。そこで、亀岡市の良さを残しながら、これからまちをどう発展させていくのかを考えた時に、環境先進都市を目指すべきだと目標を掲げました。その中で、亀岡市は世界に誇れる環境先進都市を目指しながら、環境で経済を興していく様な取り組みをすべきだということで、〝エコロジックミュージアム亀岡〟つまり、「環境をひとつの博物館のようにしていこう」というビジョンをたてました。
この〝エコロジックミュージアム亀岡〟という自らが作った20年後のまちのビジョンを実現させるために、自分の人生を変えていきました。

< 不満をポジティブに捉えること >

ー環境先進都市を実現するために考えていたことや政策を教えてください。

桂川市長:

亀岡市では〝霧〟という幻想的な自然が見られるのですが、初めの頃は、「亀岡市は自然が豊かで良いが、霧がでるから嫌いだな」といった市民の声が多く存在しました。

ほとんどの亀岡市民は霧が出た時、「せっかくセットした髪が崩れてしまう」「霧が出ているから洗濯物を干せない」など、霧に対して悪いイメージをもっていました。

しかし、霧がたなびく風景は非常に魅力的で美しいのです。見方を変えると、「亀岡市には あれだけ自然のダイナミックな雲海が見える空間がある」「霧が亀岡の野菜をより美味しくし、京野菜の日本一の生産地と呼ばれる所以を作っている」といった大きな強みになります。

このような魅力があるにもかかわらず、生活の中で「霧に対する不満」が多くあり、霧が嫌いな方が多くいることから、私はこの市民の持つ〝霧〟のイメージを変えたいと思いました。

そして、私は亀岡市のデメリットと思われていた〝霧〟というものをなるべくポジティブに変えていこうと思い、『かめおか霧のテラス』や『KIRIカフェ』を作り、『かめおか霧の芸術祭』を開催しました。

私はこの亀岡市の雰囲気を変え、文化を高めるためには、芸術家の感性が大事だと思っています。

亀岡市近郊には京都市立芸術大学や嵯峨美術大学、京都芸術大学があります。
調べていくと、そこの先生達やOB・OGなどの多くは、亀岡市に住んでいたり、亀岡市にアトリエを持っていたりすることがわかりました。

ところが、亀岡市に著名な芸術家が存在していても、人材として活かされていないことに課題を感じました。

芸術祭と言うと、「芸術家にお金を出して作品を作っていただき、展示する」といったイメージをお持ちかと思いますが、『かめおか霧の芸術祭』は、芸術祭というプラットフォームを作り、これまで認知されず、バラバラになっていた芸術家を集め、芸術家のネットワークを作るというものです。

そして、『かめおか霧の芸術祭』というプラットフォームを作ったことによって、芸術家たちがより地域に関わるようになり、新たなネットワークがどんどん構築され、ありがたいことに、若い人たちも集まってくる取り組みにまで発展しました。

< プラスチックごみゼロ宣言 ~世界に誇れる環境先進都市実現のために~ >

ー亀岡市では世界に誇れる環境先進都市実現に向けて、プラスチックごみゼロ宣言をされていますが、この宣言に至るまでの経緯を教えてください。

桂川市長:

亀岡市は「保津川下り」が有名ですが、水害などで川が増水するとゴミが溢れ、外国人観光客からも、「お金を払ってゴミを見に来ているのか」と船頭さんに苦情が入るようになりました。

船頭さんを含め、亀岡市は定期的に保津川の清掃活動をしてきましたが、いくらきれいにしても、川が増水したら上流からゴミが流れてきます。

行政も川の清掃活動に対する補助をしていましたが、根本的に制度を変えないと問題は解決しないと思い、2018年の「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」をきっかけに、環境への取り組みが一挙にスタートしました。

また、捨てられていたゴミの状況を調べると、レジ袋が最も多かったため、まずは、2020年に亀岡市議会へ「プラスチック製レジ袋の提供禁止に関する条例」を提案し、承認していただきました。

私自身も何度も清掃活動に参加した上で、市民にも清掃活動に参加していただくなど、保津川の現状を見てもらう取り組みを行いました。

また、海のごみの70%は内陸部の川から流れ出ているといわれています。そのこともあり、2012年には内陸部で初の「海ごみサミット」を開催し、「内陸部からのゴミの流出を防ぐ取り組みをしましょう!」と参加者が熱い意志を持ちました。これが「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」に繋がり、2021年に施行した「亀岡市プラスチック製レジ袋の提供禁止に関する条例」にも繋がってきています。

ーこのプラスチック製レジ袋の提供禁止を進める中で、苦労されたことはありましたか?

桂川市長:

たくさんありました。
事業者の方から今まで無料で配っていたレジ袋を配れなくすると、「お客さんが来なくなるのではないか」「レジ袋の代わりの紙袋は高いのではないか」といった言葉をたくさんいただきました。

さらにこんな声もありました。

「環境を守って、まちの経済は潤うのか。規制ばかりされて、良いことなんて一つもないのではないか」と。

しかし、私は「環境を守ることは、必ず経済にも繋がってきます。環境のイメージが良いまちだからこそ、亀岡の日本一の京野菜などにつながっていきます」などと説明をし続けました。

もちろん、全てのプラスチックが悪いというわけではなく、私たちの取り組みは、2030年までに使い捨てプラスチックを無くしていきましょうというものです。プラスチックは大変便利です。しかし、レジ袋のような使い捨てのプラスチックは、ポイ捨てに繋がり、川が汚れていく原因に繋がります。これは見過ごせません。

そのため、国がレジ袋を有料化する1年前に、亀岡市ではレジ袋を有料化し、市民に向けて「マイバック・エコバックを持って買い物に行きましょう」という運動を推奨しながら、プラスチックごみゼロを目指すために、何度も各地で説明会を開きました。亀岡にとっての環境の大事さ、プラスチックが今の社会や地球に与える影響、それはまさに、川から流れるゴミが海の汚染に繋がり、結果的に地球の汚染に繋がっていると説明しながら、「我々の住む亀岡市が環境先進都市を目指していくために、自らができる行動を起こしていきましょう」と訴え続けました。

そして、レジ袋の代わりにお配りする紙袋についても、市から1/2の補助金を出した上で、5種類の紙袋を作り、それを事業者に買っていただきました。さらに国がレジ袋の有料化を進めていたこともあって、大きなトラブルもなく、現在、亀岡市ではマイバック・エコバックを持つことが当たり前になり、今では98%の市民がマイバック・エコバックを持って買い物に行くようになりました。
また、多くのメディアにも取り上げてもらい、たいへんありがたく思っております。

今後は、ペットボトルの使用を減らしていく取り組みをしていきます。
市民の皆さんにはマイボトルを持っていただき、どこに行っても亀岡の美味しい水をもらうことができるよう、各地に給水スポットを設けたり、リバーフレンドリーレストラン(プラごみゼロを目指し、自然環境に配慮したレストラン)を推奨したりする取り組みを進めております。

また、その他にも、京都府内初の地域新電力会社「亀岡ふるさとエナジー(株)」を設立し、太陽光発電や消化ガス発電を通じ、再生可能エネルギーの地産地消を進めており、2021年には、「かめおか脱炭素宣言」も行いました。

ーこれから政策立案コンテストに臨む若者に一言メッセージをください!

桂川市長:

大事なのは夢を持つことだと思います。
私は地方自治にたいへん魅力を感じ、亀岡市のまちづくりをしたいと思い、市長になりました。
人によって、いろんなスタンスがあると思います。
そういう中で、自分の夢を持ちながら、何を基軸にして志を立てていくかが大事であり、志を立てたならば、それを実現するために、努力をどのようにし続けるのかが重要です。

(インタビュー:2022-01-17)

プロフィール

■生年月日 昭和38年2月10日
■略歴
昭和60年 東京農業大学農学部(現 地域環境科学部)造園科卒業
昭和60年 京都府教員・京都府立農芸高等学校に赴任
昭和62年 亀岡市職員に採用
昭和63年 財団法人亀岡市都市緑花協会へ出向
平成 6年 財団法人亀岡市都市緑花協会事務局長に就任
平成15年 亀岡市議会議員当選
平成19年 京都府議会議員当選
平成23年 京都府議会議員再選
平成27年 第7代亀岡市長に就任

※プロフィールはインタビュー時のものです。
桂川市長とのインタビューの様子
2022年1月17日 亀岡市役所にて
(中:桂川市長 左・右:ドットジェイピースタッフ)

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