ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.202 [首長] 徳永 繁樹 愛媛県今治市長 「まちづくりとは、市民と共有できるビジョンを策定すること」

〝まちづくりとは、市民と共有できるビジョンを策定すること〟
今治市長 徳永繁樹
JAPAN PRODUCER INTERVIEW vol.202

古くから瀬戸内の交通の要衝として発展し、
現在もしまなみ海道の四国側の玄関口として栄える今治市。
時代の変化によって大きく変わっていく市政の在り方について、
徳永今治市長にお聞きしました!

< 誰のための政治、誰のためのサービスか >

徳永市長:

今治へはUターンで戻ってきましたが、故郷の市役所がどういうことをしているのかが見えず、若い人が政治に出ていくための土壌があるようには思えませんでした。

政治に対して何かをやってやろうと思った、というのではありません。しかし、私の周りには、そうしたアイデアであったり意見を有している人が多くいました。そうであるならば、そうした声の受け皿になることにより、皆さんが政治を身近に感じることが出来るのでは、と率直に思ったのが、私が政治の世界へと入っていった最初の動機です。

ーそうして県議をされる中で今回、市長になられたわけですが、市長を目指された動機は何でしょうか。

徳永市長:

県議として18年活動してきた中で、俯瞰的な立場から今治を見てきました。劇的な変化が起こったのは、2020年からの新型コロナウイルスの拡大です。これにより、市民の暮らし、そして子どもの学びにおいても大きな変容が起きていました。しかし、世界中で劇的な変化が起きているにも関わらず、今治では、市民の方を向いているとは言えない市政が展開されているように感じました。誰のための政治、サービスなのかが見えなかったのです。そうした現状が、私を大きく動かしました。

人口減少、少子化、過疎化等種々の問題はありますが、それに向かって真正面から取り組むため、私の理念としている「市民が真ん中」を政策の軸として訴え、市長を目指しました。

< 市民と共有できるビジョンを策定する >

ー市長の思い描く理想の今治市を教えてください。

徳永市長:

10年後、今治に関心を寄せられる関係人口と定住人口を一人でも増やすこと、あるいは一人でも減らさないこと。ここを一番にやっていきたいと考えています。

そのために、第一に着手しなければならないのは、約15万4千人の今治市民と共有できるビジョンを策定することです。現在の今治市は、平成の大合併で12の市町村が一つになり、できた自治体です。いうならば、12の市町村が一つの家族になったのです。合併を行ったそれぞれの地域には、もともと様々な文化や資源があります。それぞれの地域がどのような資源や価値を有しているのかを、新たに家族になった者同士で一つ一つ実感をしていく必要があります。

そうして、地域資源を見直していくことで、例えば、吉海はこういった地域になってほしい、都市部である今治市内はこういう形になってほしいというビジョンが、全ての市民に共有できるようになると考えています。

ー市民と共有できるビジョンをつくっていくにあたり、注力していく政策をお聞かせください。

徳永市長:

コロナによって市民生活や産業はどういう変容をしているのか、今治の成長を阻害している課題は何であるのか。そうした時代の流れやニーズを市役所が的確に把握しなければならないと考えています。

かつては、愛媛県のような都道府県が専門性と広域性を必要とし、基礎自治体は地域密着性を要求されていました。しかし今は、基礎自治体にも専門性と広域性が求められる時代になっています。これが平成の大合併であり、私たちは、その趣旨をしっかりと認識しながら進めていく必要性があります。

鍵になるのは、コロナ禍で日本人が気付いたデジタル化の遅れです。時代の要請であるデジタル化にしっかりと対応していき、しまなみ沿線に人が集う環境を構築していきます。そしてしまなみ沿線での成功事例を用いて、陸地部における定住人口、関係人口の増加も図っていきたいと考えています。

< 市民の意識以上の政治はあり得ない >

ー現状の今治市の課題をお聞かせください。

徳永市長:

私が22年前に今治に帰ってきた時に感じた、「私の地域には何も無い」という考えそのものが課題であり、市民が有するその意識を変えていく事が肝要だと考えています。

そのためには、SNSやマスコミなどで地域の良さを発信し、他地域や外国人の方から「今治ってすごいですよね」という外からの声をいただくことで、地域に住む人々が、「私の住む地域ってすごいんだ」と初めて実感し、当たり前すぎて気付かないことを外からの声によって気付き、更に価値を高めていく取り組みが地域で起こっていく事で、一緒にまちづくりを進めていけるのではないでしょうか。

国民の意識以上の国政はあり得ないように、市民の意識以上の市政はあり得ません。

< 次代を育てるという意識を持って >

ー最後に、ジャパンプロデューサーとして、若者へメッセージをお願いします。

徳永市長:

自分が志したことに対しては一所懸命に頑張って欲しいと思います。丸く収まるのではなく、尖って様々な活動や発言をしてほしいです。そうすることで、社会が様々なことを教えてくれるはずです。その教えに対して、変化を恐れることなく対応していく事が、自身の成長に繋がっていきます。

若いときは周りも見えないし、がむしゃらにやる事が若者の特徴とも言えます。『虫の目・鳥の目・魚の目』といったものは、齢を重ねて持つようになります。時代や社会の流れの中で物事を考え、今さえ、自分さえよければ良いというのではなく、絶えず自分が活かされているのだということを認識しつつ、次の世代のジャパンプロデューサーを育てていくことを考えてもらえたらと思います。

(インタビュー:2022-01-27)

プロフィール

■生年月日 昭和44年11月10日
■略歴
昭和63年3月 愛媛県立今治西高等学校 卒業
平成 4年3月 京都産業大学経営学部経営学科 卒業
平成15年4月 愛媛県議会議員(5期連続)(副議長:令和2年3月18日~令和2年12月18日)
令和 3年2月 今治市長(1期目)(任期:令和3年2月20日~令和7年2月19日)

※プロフィールはインタビュー時のものです。
徳永市長とのインタビューの様子
2022年1月27日 zoomにて
(上:徳永市長 下:ドットジェイピースタッフ)

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