ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.211 [首長] 滝沢 亮 新潟県三条市長 「30年後もものづくりのまち三条であるために」

〝30年後も「ものづくりのまち三条」であるために〟
三条市長 滝沢亮
JAPAN PRODUCER INTERVIEW vol.211

新潟県のほぼ中央に位置し、
「ものづくりのまち三条」としても知られる三条市の
滝沢市長に30年後のビジョンを伺いました!

< 市長になったきっかけ >

ー三条市の市長を志したきっかけを教えてください。

滝沢市長:

私は大学院を出た後に弁護士をしてましたが、弁護士は日本に4万人ほどいるんですよ。しかし、私にとって地元の三条市長は1人しかいないです。ですから、自分だから出来ること、自分だからチャレンジできることをしたいと思い立候補しました。

ー弁護士からのチャレンジですが、不安などはなかったのでしょうか?

滝沢市長:

政治や行政の経験がないというのは市長に挑戦するに際して私の中では障壁とは思わなかったですね。弁護士になるときと一緒かなぁと。弁護士の場合も、実際の経験が全くないにもかかわらず、弁護士登録初日からお客さんの前ではひとりの弁護士ですから。

ー市長に立候補する上でやりたいと考えていたことはありますか?

滝沢市長:

市長や市役所の仕事は大きく分けると2つあると思っています。1つは今住んでいる人の満足度を上げること。もう1つは、対外的な発信です。どちらもある中で、三条市に住んでいる人の満足度を高める方の伸びしろが大きいのかなと感じていました。子育て支援も含めて、三条市がこれまで十分に力を入れてこなかった部分の満足度を上げていきたいなと思っていました。

< 30年後も「ものづくりのまち三条」であるために >

ー30年後も「ものづくりのまち三条」であるために、具体的に取り組まれたいと思われていることを教えてください。

滝沢市長:

新年度から、産官学のメンバーで構成する「三条市未来経済協創タスクフォース」をスタートする予定です。この中で、三条市の経済、産業に関する将来ビジョンを創っていこうと考えています。

ですから、私が創るというよりも「三条市未来経済協創タスクフォース」でビジョンを考えていただく形になりますね。“産官学”なので地元の企業と三条市立大学のメンバーが、市役所と協力して進めていきます。三条市のビジョンを私一人で決めるのではなく、地元の企業や三条市立大学や市役所の職員にも創ってもらうことにより、より当事者意識を持っていただけると思っています。また「三条市未来経済協創タスクフォース」ではビジョンをただ創って終わりではなく、戦略と戦術も策定した上でネクストステップまで考えていきたいと思います。

ーその取り組みの背景には何があったのでしょうか?

滝沢市長:

例えば、三条市では、包丁のように「B to C」の商品も作っています。その一方で、自動車部品のほんと細かい部品をつくっているような、2次下請けや3次下請けの町工場もあります。つまり、みんながみんな分かりやすい「B to C」の商品を作っている訳ではないです。そういった分かりやすい「ものづくり」以外にも目を配った方がいいのかなという問題意識がありました。

言い換えると、今まで「ものづくり」という言葉に甘えていた部分があると思います。しかし、三条市のものづくりには「to B」や「to C」の両方あります。また「to B」の部分だけをとっても、大きい部品や複数の部品を作っているところから、本当に小さな1種類だけの部品を作っているようなところまで、いろいろとレイヤーに分けることができるので、それぞれについてしっかりと考えることが必要です。現在、三条市は「ものづくりのまち」として評価されているので、今のうちにしっかり考えて進化していかないと「現状維持は衰退」になってしまうのではないかと思っています。

また、雇用という面でも、地方で若い方たちがなかなか働いてくれないということへの問題意識を高める必要があります。三条市には当然、外資系コンサルティングファームも外資系金融機関もないです。三条市にある働き場に興味をもってくれる学生にどうアプローチしていくのかも、これからは考えていかなければならないですね。

三条市立大学が去年の4月に開学しました。大学生は3年生の秋から就活を始めますよね。今年の春には去年の4月に入ったばかりの学生ももう2年生になるので、就活開始まであと1年半しかないんですよ。私の力が至らないところもありますが、三条市立大学の卒業生の雇用に対してまだ意識が弱いです。我々は都市圏の企業と人材獲得で戦わなければなりません。東京や大阪の大企業に人材獲得で勝つのは容易ではないですが、ちょっと考えたり動いたりするだけで他の地方企業にリードすることはできると思います。

ー三条市長としてもものづくりのまちを守りたいという考えですか?

滝沢市長:

守りたいというよりも長所をしっかり伸ばさなければという考えですね。今から三条市に新しくスキー場や遊園地を作るわけにもいかないですから、長所というものが既にあるならそれを伸ばしていくということが得策ですよね。何もしないままでは「ものづくりのまち」という今の長所を維持できない可能性がありますから、さらにパワーアップしていくためにみんなでうんうん唸りながらビジョンを創ってアクションプランを練っていくつもりです。

< 学生へのメッセージ >

ー政策立案に取り組む学生に伝えたいことを教えてください。

滝沢市長:

私は市役所の職員に「伝わってないのはやってないのと一緒だよ」とよく言っています。行政は事業をやるに当たって、そつなく遂行するというのは得意だと思うのですが、人にどう知ってもらうかというのがまだまだ下手です。やっていることをちゃんと市民の皆さんに対外的に伝えていかないといけないと思っています。どこの自治体でも広報誌があると思いますが、そこに載せてホームページに上げたら、情報発信をしたと思っているんですけど、それではだめだよという話です。

この情報発信も、ちょっとやるだけで他の自治体をリードできる部分でもあります。ですから、どう事業を実行するのかだけでなく、どう発信して、どう伝えていくのかも考えてみるといいと思います。良いアイディアが思いつくことや良いアイディアを実行することも大切ですが、それが相手に伝わっているかどうかも考えてみてください。

(インタビュー:2022-02-09)

プロフィール

■生年月日 昭和61年1月7日
■略歴
平成20年   一橋大学法学部卒業
平成22年   東京大学法科大学院修了
平成21年11月 司法試験合格
平成24年1月 東京の外資系法律事務所で弁護士登録
平成30年4月 三条市に「ひめさゆり法律事務所」開設
令和2年11月 三条市長就任

※プロフィールはインタビュー時のものです。
滝澤市長とのインタビューの様子
2022年2月9日 zoomにて
(左:滝沢市長 右・下:ドットジェイピースタッフ)

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