ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.213 [首長] 高橋 邦芳 新潟県村上市長 「繋がることで生まれる村上の誇り」

〝繋がることで生まれる村上の誇り〟
村上市長 高橋邦芳
JAPAN PRODUCER INTERVIEW vol.213

新潟県の最北端に位置し、海、山、川の自然豊かで
歴史・伝統・食などの魅力あふれる村上市。
そんな村上市に市民が誇りを持つために
取り組んでいる施策について質問しました!

< 市長になったきっかけ >

ー村上市長になったきっかけを教えてください。

高橋市長:

私はずっと地方行政の公務員として働いてきました。一自治体ではなく広域行政を担う特別地方公共団体の一員としてです。そこでは、複数の自治体が共同して1つの行政事務を進めていました。しかし、平成20年に5つの市町村が合併し、同時に私は広域行政の職員から村上市の職員になったわけです。その時は一職員という立場でしたが、7年目に当時の初代市長が任期途中で退職されました。合併した地域をまとめあげ、同じ方向へ向かわなければならない。過疎地も市街地も、豊かなところも豊かでないところも、市民が1つの目標に向かって同じ幸せを受け取ることが出来る行政を止めることはできないと思い市長になることを決めました。

ー実際に市長になることができた原動力は何だったのでしょうか?

高橋市長:

市長になるというのは大変厳しい決断でした。周りからの支援もありました。家族も巻き込まなければならなかったですし、選挙にも勝ち残らなければなりません。しかし、それでもやらなければならないという使命感がありました。岩船地域広域事務組合や村上市役所で勤めていたことから、村上市はこうあるべきだという確固たる方向性は見いだせていました。村上市を前に進めなければならないという揺るぎない信念を基に市長になりました。

< 村上市に誇りを持ち続けるために >

ー高橋市長が考える30年後の理想の村上市について教えてください。

高橋市長:

昨年、村上市はゼロカーボンシティの宣言をしました。村上市は1174㎢という大きな面積を有していますが、その約80%が森林です。しかし、森林面積が多いということはカーボンニュートラルを目指すにはうってつけでした。むしろ、都会には取り組めない、村上市だからこそ取り組むべき使命ではないかとも考え、30年後はカーボンニュートラルを実現するつもりです。

また、30年後の村上市は持続可能性がある状態ではなく持続している状態になっていなければいけません。村上市には現在5万7千人が住んでいますが、それが30年後には3万4千人ほどになると言われています。しかし、先ほども述べたような村上市の大きな面積は変わることはありません。村上市には274の集落があります。大きい集落なら150世帯くらいありますが、小さい集落では5世帯しかいないところもあります。そのため、人口が2万人減れば消滅してしまう集落もあるでしょう。その中で「持続していけるまち」を形成していかなければいけません。

そんな変化が起きる中でも持続するために、歴史を積み上げ人口は減ったけれどもみんなが誇りを持ち続けることが出来るまちであり続けることが重要です。DXで劇的に生活環境は変化していきますが、ふるさとへの愛着などは人間の持つ本質です。「わたしのふるさと」「僕のふるさと」というように、ここで生きていくことが私の誇りなんだという想いに至るまちであることが理想です。

ー市民が村上市に誇りを持ち続けるために取り組んでいることを教えてください。

高橋市長:

地元を離れて生活の基盤を作る人はいます。村上市では特に女性が都会に出ていくことが多いです。しかし、村上市を出たとしても生まれ育った土地に対するアイデンティティや想いはずっと変わりません。ですから、それを活かした関わり方があると思っています。地元と地元を離れた人との物理的な距離は短縮できませんが技術の変化で時間的距離は短縮されます。そうすると地元と連携していくことは可能だと思います。やはりふるさとを思い出すと懐かしいし、良かったと思いますし、それは誰もが持っているものですから。

コロナ禍では学生が帰省できず、両親も子どものところへいけないという状態でした。リアルに時間を共有したいのにそれができませんでした。そこで村上市では「学生応援便」というものをやりました。ふるさと応援寄附金の返礼品を学生に選択できるようにして、地元に帰れない学生に特産品を届けて同郷の人でシェアしてもらうという取組みもしました。そうすると、「学生応援便」に対してSNSでも多くの反響があったんです。「村上市の気持ちがありがたかった」、「将来は村上市のために働きたい」などの声もありました。これがふるさとと人を繋ぐということなんです。学生応援便によってこれからの社会を担う世代とふるさとへの愛着や誇りを繋ぐこともできました。

ー村上市を離れた方とのつながりというのを大事にされているのですね。

高橋市長:

また、村上市を離れた人が地元に愛着を持つのと同時に、村上市に関係ない方も関係人口として共感してもらう、村上市を応援してもらうことも必要です。村上市も応援するし、他の自治体も応援するということでいいと思います。国内におけるグローバルリズムのようにしていくことができればいいですね。これからの自治体は競争して勝ち残るのではなく、国として人口が減る中で国を豊かにするために関係人口の増加は必要なことと考えています。

そういった中で都市間連携も進めています。例えば、村上市は平野歩夢選手の出身地ですが、コロナ禍の前にはスケートボード競技を推進している自治体で連携しようという試みもありました。オリンピックを経てスケートボード競技場を持つ自治体は大幅に増えましたので、スケートボードというキーワードで連携するということが可能になっています。そういった、あるきっかけから都市と連携することをしていけたらと思います。

また3年前の山形県沖を震源とする地震で村上市内では震度6強に見舞われました。その時連携している太平洋側の自治体からたくさんの応援を頂きました。こういった応援は力強いし安心もしました。反対に東日本大震災の時にビーチバレーの聖地としても有名な茨城県大洗町のきれいな砂浜がすべて津波でさらわれるということがありました。その時に、村上市の岩船港の砂をダンプ80台くらいで大洗町に持っていき、翌年からビーチバレーが再開できるようになりました。このように都市間で関係性を見つけ出し繋がっていくことが大事なんだと思います。

< 信念を持って政策に挑め >

ー政策立案やまちづくりをする学生にメッセージを頂いてもよろしいでしょうか?

高橋市長:

重要なことは信念を持ちしっかり信じてやることです。もちろんただ闇雲に信念を貫くというわけではなく、やっている方向が正しいのか他の方向はないのかと振り返えることも重要です。ただ、信念を持って進めて行ったとしても時折失敗します。しかし、そこで止めるから失敗になるのです。政策を机上で展開するだけの時やコンテストに向けて進める時に大きな失敗はないですが、その政策をぶつけたときに大きな反発や批判もあると思います。しかし、それが次の糧になります。ですから、とりあえず社会の今の流れに迎合したり社会通念上の常識にマッチングさせとけという考えではなく、これぞと信じた目指すものに突き進みながら、1度や2度の失敗に屈せずに頑張ることをして欲しいです。

(インタビュー:2022-03-08)

プロフィール

■生年月日 昭和34年9月11日
■略歴
昭和50年3月 村上市立村上第一中学校 卒業
昭和53年3月 新潟県立村上高等学校 卒業
昭和57年4月 岩船地域広域事務組合 勤務
平成20年4月 5市町村の合併により村上市役所 勤務(総務課長補佐)
平成25年4月 議会事務局長
平成27年5月 村上市役所 退職
平成27年6月 村上市長に就任

※プロフィールはインタビュー時のものです。
高橋市長とのインタビューの様子
2022年3月8日 zoomにて
(左:高橋市長 右:ドットジェイピースタッフ)

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