ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.061 [市職員] 荻野 裕嗣・松原 徹 大阪府寝屋川市総務部人事室 「今よりもジャンプ 新しい世界が見える」

大阪府寝屋川市総務部人事室

寝屋川市総務部人事室 荻野 裕嗣・松原 徹

 

まず、人事評価制度のご紹介をお願いします。


■荻野さん
「360度からの評価」をしているところが特徴です。
まず1つは、上司が部下を評価する。
2つ目は、部下が上司を評価する。
3つ目は、同格者による評価。
4つ目がが自治経営評価です。
課長代理以上が対象ですが、全ての角度から評価を受けるのは理事・部長以上だけです。その他の者は前半の2つです。
成果評価については、目標設定と人材育成について、年度初めに設定し年明けに評価を行っています。
■松原さん
もう1つ特徴を挙げるなら、評価結果をボーナスに反映しているところです。
現在、SからDの5ランクに評価を分け、金額に反映します。



他市と比較していかがですか?


■荻野さん
上司が部下を評価する自治体は多いと思います。ただ360の角度から評価するは珍しいです。今までに70~80団体が視察に来られました。
■松原さん
ただ、寝屋川市の人事評価制度には曖昧な部分も残っています。そんなに精緻には作られていない。他の自治体はコンサルタントが入って、制度としてはとても精緻なものに仕上がっています。
寝屋川市の場合は曖昧な柔軟な部分を残しています。他市の場合は制度としてきちっと作られているなという感想は持っています。



今後、この制度の方向性はどうなるのでしょうか?やはり、より精緻な制度に詰めていくのですか?


■松原さん
寝屋川市の人事制度ですので、寝屋川市の中で運用しやすいものでないといけません。制度としての精緻度は高くないが、寝屋川市が運用しやすいという面では利点でもあります。他市がそのまま運用しうまくいくものではありません。。



どうしてこの制度を作ろうと思われたのですか?


■荻野さん
今まで人事評価制度もきちっとしたものが無かったし、昇格についても成果によるものではありませんでした。平成10年度から課長候補者試験を導入し、翌年には係長候補者試験も導入しました。感覚的ではない評価制度を取り入れて、なおかつ人材育成を図っていこうではないかということです。
ただ、人材育成が今どこまで進んでいるかは定かでありません。ここが大きな課題です。それから、結果を貰ったところで自分がどこが悪いかということが理解できないと次に進めないですよね。現段階ではフィードバックは行われていないので、ここも課題です。
■松原さん
一般的に人事評価制度について言われることですが、制度を設けなくても組織の中で自然と評価を行われています。ただそこから恣意性を取り除くということが大事なんです。客観性、透明性を維持するためにはシステム化するべきです。仕事の行動や貢献に対して良い物は褒めて、悪いものは改善する。
とにかく無関心というのは、一番あかんことと違うかと思います。
そのために人事評価制度を設ける必要があります。
誤解しないでほしいのは差をつけて選別する、つまり序列をつけることが本来の目的ではないことです。
CやDがついた人にはもっと頑張ってもらう。
AやBがついた人にはさらに伸ばしてもらう。
皆を伸ばしていくのが、本来の姿ではないかということです。



では、制度をつくるにあたって苦労した点を教えてください。


■荻野さん
この制度をつくるにあたって市長から言われたのですが、「おもしろいものをつくれ」といわれました。
1点は、切り口。アピール・アクション・チャレンジという3つなのですが、一般的にある人事評価制度の切り口をそのまま使ってしまうと面白くないので、こういった切り口を考え出すのに苦労しました。
あと、簡単でわかりやすいものを心がけた点です。制度として精緻なものを目指せば、項目も複雑になります。しかし職員に負担をかけてしまう。ですので、なるべく簡易なものを心がけました。



制度導入にあたって職員の反応はどうですか?


■荻野さん
簡易なものを心がけたからか、書きにくいとかいう感想は出ていません。ただ今対象となっているのが課長代理以上なので、対象を広げるとまた違う反応はあると思いますが。



この制度が職員の方のモチベーションアップにつながっていると感じますか?


■松原さん
みんなを伸ばすためには、Bランク、つまり標準の人に頑張ってもらうことが大切です。
制度の存在が意欲を上げるのに一役買っているのではないかと思います。ただ、どのランクがついたかは本人しかわからないようになっています。ボーナス貰うときに自分にどんな評価がなされたかよくわかるので、このときモチベーションアップするんじゃないかなと思います。



話は変わりますが、お仕事をされる上で議会や議員さんはどのような存在でいらっしゃいますか?


■松原さん
議会は、行政運営を監視する重要な役割を担うなど、市長と牽制し合いながら、一体となって「元気都市」を実現する機関であり、議員さん一人ひとりが市民全体の代表として真摯に活動されておられます。
議員さんからは、厳しいご指摘やご質問を頂き、正直に言って、とても悩むこともありますが、頑張る職員にとって力強い存在であると感じています。



再び、話は変わりますが、人事室の職員さんということで、学生の採用をされていて何を感じますか?


■荻野さん
寝屋川市の場合は教養試験と面接を課しています。専門試験は実施していません。
つまり人物本位の採用です。資格学校などで勉強してきた人はこちらも面接していてわかるんです。
ただ大切なのは、テクニックじゃなくてどういう目的を持って公務員になりたいのか。そこを整理をして受験していただきたい。
そういう人の方が採用する者から見ると優れていると感じます。
■松原さん
面接していてわかるんですよ。これは学校で教えてもらった答えやなと。それよりも自分なりの考えを伝えられる人の方が点数は高いです。



面接していてご自分が学生のころと変化したなと思う点はありますか?


■松原さん
今、就職難ですよね。私個人の印象ですが、受けにくる学生は皆頭が良いです。
ただ、印象としては全く元気が無い。何でこんなに元気がないのかと思うくらい。業種の違いでしょうか?
これだけたくさんいるのだから、もっと元気があっても良いのにと思います。民間はまた違うのかもしれないですが。
■荻野さん
寝屋川市の場合は平和堂やジャスコさんと一緒に研修するんです。
民間はわりと早い時期から研修するので、それもあるのかもしれないですが、声の大きさが全然違いました。民間の新入社員はとても元気があったんです。これは職種の違いなのかなと思いましたが・・・私の個人的な印象です。
■松原さん
入ってからも元気が無いです。
僕らのころは毎晩呑みに行ってました。でも翌日は必ず出勤する。
私が新採用のときは、皆の机拭きをしていました。どんなに二日酔いのときでも、朝机を拭くんです。ですが最近の若い人を見ていると仕事中も元気が無い。「何でやろうなあ」というのがとても不思議なところですね。
■荻野さん
公務員志望の人は民間と併願しない。これも不思議です。公務員試験を受けるのは4回生。3回生のときは時間があるはずなのに。心が決まっているのかもしれないですが、民間を併願しない方が多いのは不思議です。
■松原さん
公務員になってからの話にも通じるのですが、自分はここまでかなと決めてかかっているのではないかなと思います。新しい可能性を見出そうとしないのではないかと。恩師から「今よりもジャンプしてみなさい、そうすると新しい世界が見える」と言って頂いたことがあります。
自分のいる位置から少し背伸びをすることで新たな自分が見える。こういう前向きな姿勢が必要だと、自分にも言い聞かせています。



最後に、若い人たちへのメッセージをお願いします。


■松原さん
想像力が大事だと思います。自分と関わる人がどう思っているかを想像する。
今、若い方と話していて、通じないなと思うことがあります。相手が何を望んでいるのかを想像して欲しい。自戒を込めてですが。



(インタビュー:2006-01)


名前 荻野 裕嗣(おぎの ひろつぐ)・松原 徹(まつばら とおる)
所属 大阪府寝屋川市 総務部人事室
※プロフィールはインタビュー時のものです。

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