ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.088 [首長] 石川 良三 春日部市長 『己に克つこと。時代をけん引するのは若者です。』

市長

春日部市長 石川 良三
所属 春日部市長
選挙区 埼玉県春日部市
公式サイト

 

なぜ、政治家になったのですか?


私はいつも地域のリーダー役でした。

近所に建歴1211年、鎌倉時代に建てられた由緒ある神社でお祭りがおこなわれていて、私が小さなころは小学校が半日お休みになるぐらい大きなイベントでした。
しかし、時代とともに、担ぎ手がいなくなるなど後継者不足が発生し、お祭りの開催が危ぶまれました。
私はその時、「そんなことはさせない。我々が楽しんできたお祭りを、これからの子どもたちにも楽しんでもらいたい。」という想いから、地元の若い人を集めた「若人会(わこうどかい)」というグループを作り、お祭りを復興させました。それが、21歳ぐらいのころでした。
その後、中学校のPTA会長など地域のリーダー的な役割をつとめるうちに、教育の重要性はもちろん、地域の課題などを認識し、市政改革をしなければという強い使命感にかられました。
そして、1990年に自らを春日部市の発展のために捧げる決意をもって春日部市議会議員に立候補し、多くの皆さんに応援され当選しました。



市長になろうと思ったきっかけは?


新市誕生こそ改革の最大のチャンス。
市議会議員としての活動を通じて、より一層、幅広く行政について学び、様々な課題も実感していました。そして、2005年に春日部市と庄和町が合併することとなりました。

私は、当時の停滞した市政を打開するには変わらなくてはいけない。新市誕生こそ改革の最大のチャンスという使命感に再びかられました。
また、春日部という地元に対する愛着、培ってきたノウハウ、仲間、そういったものを考えると、私よりも上手にできる人はいないと自分を奮い立たせました。
誰と選挙戦を戦おうが、どのような状況になっても自分は出るという不退転の決意で、前知事や、当時の現職の市長さんのところに挨拶に行き、生意気にも想いを伝えました。

そういった熱意、気迫が通じたのか、合併後の初代市長に就任させていただき、現在にいたるわけです。



春日部のオススメは?


世界に挑める教育レベルと数多くのイベントが春日部市にはあります。

教育関係では、私たちが学校に在籍中は、頑張っても県大会で一位になればすごいと言っていたのですが、今は関東、全国はもちろん、世界と競うレベルに育ってきました。
春日部の教育レベルは、その域にまでなりました。
空手で世界に挑む児童もいますし、ヨーヨーの世界チャンピオンの生徒など世界にどんどん出ていっています。

また、いまや合唱といえば、春日部です。市内の豊春中学校はベルギーの二ールぺルトで開催された「ヨーロッパ青少年音楽祭」で、審査委員が全員満点の世界一に輝きました。
こういったことを受けて、市でも毎年11月に「かすかべ音楽祭」を開催するとともに、街のあちらこちらでジャズやポップスなどの音楽が奏でられる「まちかどコンサート」も同時に開催しています。
子ども達の活躍が市全体の誇りとして、新たな動きにつながっています。

また、春日部市には世界一樹齢の長いともいわれる1200年の牛島の藤や、800kgもある日本一の大凧などもあります。
これにちなんで、春日部藤まつり、大凧あげ祭り、大凧マラソン大会、春日部夏まつり、ジャズデイなどイベントが目白押しです。

他にも、東京以外では開催されたことのない、伝統工芸の催しや、ボクシングの内山高志選手の世界タイトルマッチも開催しました。各イベントの動員数は半端ではありません。

その他あげればきりがありませんが、春日部は犯罪認知件数が他市に比べて低く非常に治安もいいですし、世界に冠する「首都圏外郭放水路」があり水害もありません。
物価も安いし、医療関係も充実しています。児童館も埼玉県下で一位、二位を争うくらい活気を呈しています。

住んでもらって失敗したなと思うことはありません。これからももっと充実させていきます。



市長としてのやりがいは?


市民の皆さんが参画してくれて、それで輪が広がっていくこと。

教育の話もそうですが、市民一人ひとりが言葉だけじゃなくて、自分たちが主役になるという意識が大事です。
春日部にはこんないい人、立派な人がいるということを、私は常々言っています。私から直接市民の皆さんに伝えると市民の皆さんも喜びますし、じゃあ自分も、と言って参画してくれる。それで輪が広がっていく。その繰り返しが得られた時にやりがいを感じます。

直接市民の皆さんに伝える場として、イベントには頻繁に足を運びます。平成23年度は1442箇所に訪問しました。そうやって現場に行って話をさせていただいています。私が現場に行くことで、現場には緊張感が生まれて良い作業ができますよね。



市長の哲学は?


現場主義。現場にこそ真実がある。

現場を見て、現場で学び、現場で仕事をしないといけません。百聞は一見に如かず。市内での移動がほとんどなのに、1年間で2万キロも走行しました。とにかく現場を大事にすることです。

様々な活動をしている市民の皆さんの活動の現場、市職員が働いている現場、それぞれ現場の皆さんの方が、知識・経験が豊富なのです。市長としてはその人たちが力を発揮できるような体制を作ることに徹することが大切です。「責任は俺が持つからみんなしっかりやってくれ」と伝えると、みんな本当に一生懸命頑張ってくれます。それが成果につながるのです。

個々の能力を少しずつ上げていってリーダーを中心にみんなで協力してベクトルを一つの方向に向けていくと、素晴らしい力が発揮できます。



市長の哲学の原点は?


現場で生きてきた人間だから、原理原則を外さない。

以前トマト栽培をしていた頃、仲間とグループを作って販売していました。「誰よりもどこよりもいいものを作るんだ」と目標をもって取り組んだ結果、宮内庁御用達になりました。現場で頑張れば、必ず成果があがる。それを信念に生きてきたからこそ、自分の原点は現場なのです。

例えば、いいトマトを作るために、原産地の研究を行ったり、栽培に適した土や肥料を研究したりと、原理原則を追求しました。植物はうそをつきません。考えて適切に手をかければ、必ずそれに応えてくれます。

基本の部分をしっかり踏まえて、努力すること。基本をわきまえる。
何においても「本質」を極めないといけませんね。



若者に期待することは?


自分で見て、自分で体験すること、です。

今は、いろんな情報を簡単に手に入れることができ、一億総評論家と言われています。
実際に本当に自分の肌で感じて実物を見て評論するならいいと思いますが、人からの受け売りのみで批判するのは絶対によくないです。

自分は体を動かさないで、相手を批評するなんてとんでもない。
現実を見て批評すべきだと思いますし、実態を知った上で意見することが大切だと考えています。

次に、労を惜しまないこと。
汗をかいて、現場で、得るものはあります。若いうちの苦労は買ってでもしたほうがいいです。
知恵や経験はそこら中に転がっています。
そこから自分がいかに学び取れるかが大事です。

大変な裏方仕事には楽しみがいっぱいあります。
良いところ・悪いところは背中合わせ。
苦労することは、見方を変えると楽しいことです。

ある一定時間を越して成果が出たときは、あの時こんな苦労したから、今こんなにも輝いていると思えるものです。
あの時があるから現在がある。
私も過去の苦労・汗がなかったら現在はありません。



若者に対してのコメントをお願いします。


成人式でもよく言うのですが、「克己(こっき)」。
己に克つということ。まずはそこからです。

いろんな誘惑がありますが、それをはねのけて、自分が目標とするものは何か。そのために何をするのか考え進むことが大切です。

最終的に勝負するのは自分です。自分に勝ったら成功は次にぶら下がっています。

もう一つ、若い人たちは特に、チャレンジ精神を持ってハングリーになってください。
そのために大きな目標を持ってください。ハングリーになって一生懸命ぶつかっていかないと、先が見えないですよ。
特に今のような混沌とした世の中だからこそ、若者のハングリーさが必要です。そういったパワーのある若者が、国の難局を打開していく。その大本になってください。

結局は若い人たちがいつまでも若いわけではなくて、これからその人たちが日本を背負っていかなければいけないのです。

自分たちが携わって、自分たちが率先していく。
明日からは自分たちが日本を背負っていく。そういう気持ちを持てば、どこをどうしていけばいいかを考えはじめます。そういった気持ちをもって生きていってください。



(インタビュー:2012-10-03)


昭和45年3月 埼玉県立杉戸農業高等学校卒業
平成7年6月 春日部市議会議員(1期)
平成11年6月 春日部市議会議員(2期) 市議会総務委員会副委員長
平成15年6月 春日部市議会議員(3期)
平成17年11月 春日部市長(1期)
平成21年11月 春日部市長(2期)
※プロフィールはインタビュー時のものです。

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