ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.090 [首長] 須田 善明 女川町長 「『文句や批判をしているだけでは世の中は変わらない。まずは自分から意思表示や行動を起こしていこう。』」

町長

女川町長 須田 善明
選挙区 宮城県女川町
公式サイト

 

須田町長が県議会議員から女川町長になろうと思ったきっかけを教えて下さい。


町長になろうと思ったきっかけ、というより出発点は震災です。
私は震災が起きた当時は38歳で女川町長になったのが39歳の時でした。子育て世代の現役であり、様々な社会の現場で一定の責任を担う世代でもあります。私たちはちょうど20年経つと還暦、組織や地域社会においても社会全体の責任を担う世代になります。
つまり、20年経った時、私たちが地域社会を背負う存在になります。だったら将来背負う責任を今のうちから背負わなければいけないだろうと考えました。我が町では震災により町民の約一割が犠牲となり、七割強の建造物が失われました。被災率では最大の自治体です。女川町における復興はマイナスから出発して新たな町をまるごともう一度創る作業です。
政治的立場を転ずるにあたっては相当悩みましたが、現在中心になって活躍している先輩方が作ってくれたものを後で背負うよりも、今から私たちの世代が責任を持ちゼロからの一歩目を踏み出していかなければいけないと思ったからです。

また、自分のことを捨てて人のために全力を尽くしている姿、復興のために手をとりあって助け合う姿を、私たち世代が子供たちに見せていかなければならない。そのような私たち世代の姿を今の子どもたちが見て育ち、将来を担う存在になって欲しいです。



「町長としてのやりがい」を感じるのはどのような瞬間ですか。また、県議会議員の時と町長になってから何が一番変わりましたか。


やりがいと言っていいのか分かりませんが、千年の一度の大災害によってマイナスになった町を一から再建するという意味では、「千年に一度の町づくり」ができる機会だという点ですね。
その陣頭指揮を取らせていただいていることと、私たちがこれから過ごしていく未来をどういうものにするか直接「形」にすることができることだと思います。
どちらかというとやりがいと言うよりも意義に近いですね。

今回やること、つまり我が町の復興は、町の規模は小さいけれども社会そのものを作ることだと思います。もしくはその前提となる基盤づくりや町の風景の色合いを作ることだと思います。

私が政治に携わっているのは地域をよくしたいということも含めて社会の有り様を現出させていきたいという思いからですが、そもそも、県議会議員と町長は役割が違います。その上で、県議会議員の時と比べて変化したことは、地域作りにより直接携われるようになったという点です。一方、町長は実際に物事をやれる権限を持っていますので、権限を行使することに対して緊張感や畏れをいつも携えておく必要もあります。



3.11から1年半経過しましたが、今後女川をどう再建していきたいか教えてください。また、若者にどのようにまちづくりに参加して欲しいかも教えて下さい。


女川町長になった当初は私たち世代の視点で女川町を再建することが大切だと思っていましたが、直後に次世代への視点を強く意識した再建でなければならないことに気が付きました。子どもたちがいなければ、いくら復興したとしてもこの町を背負う人がいなくなってしまうので、将来的に女川町がなくなってしまう恐れがあるからです。

同時に、ゼロからの復興ですので、過疎化や高齢化、一次産業の苦戦など東北の地方都市が抱えてきた課題に対しての答えとなるような町づくりをしていきたいと考えております。
具体的には、住居の高台移転と同時に人々の活動動線が集約されるコンパクトシティを実現させようと思っています。それによって町全体に活力を生み出していきたいです。

元々女川町は昼間人口の多い町ですので、人が集うことによって経済活動のみならず様々なものの活力を出していくという町づくりを考えています。
一つのコンテンツがあって人が来るのではなく、来た方々自身が楽しみを作り出していくような空間形成をしていきたいと思っております。それを行うにあたり、舞台装置として中心となるエリアをどういう風にしていくのかが一番の肝だと思いますし、それに基づいて建物のプロットを考えていきたいと思っています。

若者とまちづくり、ということでは、復興まちづくりのプロセスに直接絡んでもらう仕組み、具体的にはワーキンググループを起ち上げました。メンバーは世代を問わず公募で集めたのですが、嬉しかったのが今まで町のイベントなどに直接は参画したことがなかった20代~30代の方々も参加してくれたことです。色々なきっかけを作ってもっとたくさんの方々が参加できる仕組みを作っていきたいですね。誰かが町づくりをしているという考えではなく、私たち一人ひとりが町づくりをしているという意識を持って若者の皆さんに参画してほしいです。



須田町長は女川原発を将来的にどうしていきたいですか?


我が国のエネルギー事情と照らしあわせた時にどうなるのかというのが問題になってくるのではないのでしょうか。

私は、マクロ的な電源供給の観点から、国民生活と経済発展を支えるという点で原発を動かしていくことが現実的な選択だと考えます。再生可能な自然エネルギーの導入促進は原発の可否にかかわらず積極的にやっていくべきですが、一方で、今の段階では原発エネルギーを代替して自然エネルギーが日本全国を賄うのは現実的に不可能です。
原発を除けばエネルギー自給率わずか4%の我が国において、原発は、外的環境の変化に対して一定程度にコスト面あるいは供給の安定性から考えて有意義な電源であるのは間違いないと思います。カントリーリスクや国際問題が起こった時に対応できる環境は作っておくべきです。但し、過酷事故等の問題が起きないようにする対策や、問題が起きた場合の保障などの社会的なシステムも必要です。

今後のエネルギー政策においては、再生可能エネルギーの普及とともに新電源開発、具体的には、ベース電源になりうる電源開発への積極的な投資を国として行っていくべきだと思います。ただし、それは原発再稼働の議論と同時並行にやっていかなければいけないと思います。
と申しますのも、理想形を求める努力と現実的な現場の対応が同時にそれぞれあるので、現実的な供給の議論のときは動かしていくものを最低限動かしていくべきだと思うからです。

短中期的な重要電源としての原子力の位置づけは私の中では変わりません。
女川原発の議論というよりも、もっとマクロの議論として捉える中で個別のプラントの耐震性や災害に対する耐性が判断されていくべきだと思います。
我が町のプラントは補修の段階です。耐震性を上げる工事を行うので当然時間がかかります。

その結果として、客観的な安全性、健全性が担保されるようになったら再稼働についての判断をすべきだと思います。



ドットジェイピーでは職業にかかわらず、様々な立場から国や地域をよりよくしようと取り組んでおられる方々のことを「Japan Producer」と呼ばせていただいております。その「Japan Producer」を一人でも多く輩出することを理念に掲げ、この14年間、活動を続けてまいりました。
須田町長が考える「Japan Producer」について、ご意見をお聞かせください。


皆さんジャパンプロデューサーになり得る存在だと思います。
どんな行動をしようとも誰かに何らかの影響は間違いなく与えています。

最初は自分のためにアクションを起こしていたけれども、結果的に相手に夢や希望を与えることだってあります。そういう意味で、思いがあって行動を起こすことができる方というのは何かを生み出すことができますので、アクションを起こす方のすべて該当するのではないのでしょうか。

まずは何事にもチャレンジしてみること、自分から動くことが大切なのだと思います。一人が頑張ったところで何も変わらないかもしれませんが、一人でも頑張らないと何かが変わりませんので。



私たちドットジェイピーは、より若者に政治に参画してもらうことによって、復興に貢献したいと考えています。須田町長から、若者にメッセージをお願いします。


これから社会を作っていく最初のスタートラインに立とうとしているのが学生の皆さんです。外的環境が変化しているので、昔と比べて大変だと思います。しかし、皆さんにとってはその環境がすごく当たり前のものであり、ちゃんと環境に適応してやっていけているので大丈夫だと思います。

皆さんそれぞれ目的意識や社会に対する思いがあると思います。学生の今のうちだからできることもあると思いますし、どんな理由でも構わないので社会に対して関わってみようと思うことが大切なのだと思います。

文句や批判をしているだけでは世の中は変わりません。まずは自分から意思表示や行動を起こしてください。
関心がなくても世の中は動いていくものなので、文句を言うよりも参画していくべきだと思います。

否応なく「自分たちが社会を背負う年代」否応なく来ますので、これから自分たちが社会を動かしていくのだ、という当事者の意識を持っていってほしいです。



(インタビュー:2012-09-25)


昭和47年 6月3日生まれ
平成10年 入社株式会社電通東北(広告代理店)入社
平成11年 県議会議員補欠選挙にて初当選
平成21年 9月 自由民主党宮城県支部連合会幹事長
平成23年 11月 女川町長就任
※プロフィールはインタビュー時のものです。

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