ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.099 [首長] 戸張 胤茂 吉川市長 「『元気すぎるくらいが丁度いいのです。パワーをもちつつ、広い視野をもって社会に目を向けて下さい。』」

市長

吉川市長 戸張 胤茂
所属 吉川市長
選挙区 埼玉県吉川市

 

市長になられたきっかけは何でしょうか?


学生の頃から政治に関心はありました。ただ、当時は具体的な形を想像していたわけではなく、漠然と何らかの形で政治に入りたいという心境でした。若い頃は衆議院選挙の際、投票に行く高齢の方を投票所へ送迎するお手伝いもしたことがあります。



地方では年々投票率が下がっているようですが、そのことについてどう思われますか?


国政選挙はある程度投票率は良いですが、地方の議会や市長選は芳しくないですね。それは情けなく思います。
市長の立場としましては、とにかく投票しやすい環境作りを実行していくことが第一です。公職選挙法がありますので範囲は限られていますが、可能な限り投票しやすい環境作りをしています。またここ数年、選挙の際に吉川高校の生徒の方々に期日前投票のボランティアをしていただいています。投票所の事務をお手伝いする、そういった小さなことでも体験をすることで、興味がわき立つでしょう。



一時、吉川高校が廃止されるという報道もありましたが、それについてお聞かせください。


平成25年度から吉川高校が吉川美南高校に変わるのですが、2年前、県の高校再編計画で吉川高校の廃止が突然決まりました。一方的な決定でしたのでこれはとんでもない話だと思いました。地域としては廃止の決定を受け入れられないということで、関係団体の代表の方や議会の代表の方に間に入って頂き、署名活動をしたりして何度も申し入れをしました。そうした努力の積み重ねがあって、我々の思いが通じ、若干形は変わりましたがようやく県も受け入れてくれました。
吉川高校は市にとって唯一の高校です。生徒が少ない過疎地域では県の再編計画はやむを得ない場合もありますが、吉川市は人口が増加しており、来年には新しい小学校ができるほどです。そのような地域でなぜ吉川高校の廃止が決まったのかという思いがありました。全ての子供たちが地元の高校に通う訳ではありませんし、事実、地元高校への進学率は下がっています。県の方向性として廃止にしても残すにしても、高校を活性化すること、そしてそれを施策としてやっていくことが重要ではないでしょうか。



市長として困難だったことはありましたか?


初めて市長に当選した当初はバブルがはじけた後でしたので、財政的な問題が一番大きな課題でした。そのような状況下で住民の方々の要望が多岐にわたっていたので、どのような優先順位、形で取り組むべきか考えなければなりませんでした。私が行ったのは、全ての面での行政改革です。職員の数から各団体の補助金の見直し、また私自身でも痛みを感じなければと思いまして、自分の給料を10%カット、これを6、7年続けました。



吉川のいいところは何ですか?


吉川市はもともと早稲米で有名な農村都市です。東京から比較的近いにも関わらず自然が残っていて住環境が良いところです。自然と都市がうまく調和した、気の休まるようなまちを作りたいですね。「子供を育てるなら吉川市」、そういう目を向けていただきたいです。
現在、新しい人を呼び込む施策の一つとして都市基盤の整備をしています。毎年1000人ずつ人口が増加していて、東洋経済が出した全国都市住みよさランキングでは県内2番目、3,4年前は全国で811都市の中で58位でした。これは良いモチベーションになりました。住みよさ日本一を掲げてまちづくりを進めていきたいですね。
また今年、区画整備の一環として吉川美南駅が完成しました。周辺のまちが未完成ですのでまだまだこれからですが、吉川美南駅が新しい街の核としてまちづくりの中心になればと夢を描いています。このまちと駅の名前は公募制で市民の方々に応募していただきました。吉川なまず駅など、色々な候補がありましたが、最終的に吉川美南に決まりました。



吉川市という新しい市の市長としてどのような思いがありますか?


吉川は新しく移り住む方が年々増え、特に子育ての若い世代が多いです。今は産み育てやすいまち作りが必要で、行政として支援できる体制を整えています。
例えば保育所の待機児童の解消に取り組んだのですが、今年の4月に民間の保育園が2つ開園し、待機児童がゼロになりました。また、子供たちの医療費は中学卒業まで無料化しています。お金がかかるのでなかなか大変ですが、幸いにも吉川では何とかやっています。しかし、無理をしてでもできない地方自治体はいくらでもありますから、このような全ての国民に提供すべきサービスは国に責任をもってやって頂きたいですね。



若者へのメッセージをお願いします。


全ての若者が政治に関心がないわけではありません。吉川の青年会議所JCではまちづくりに対して色々な意見を出してくれています。今回の衆議院選で候補予定者の討論会を計画するなど、とても意識が高いですね。また市議会では年配の方々が引退し、30代や40代の方が増えていて、25歳で当選した方もいらっしゃいます。若い方は可能性がありますし、ある意味では政治に関心を持つ若い方が活動することによって全体の意識も高まると思います。
自分の若かりし頃もそうだったかもしれませんが、若者は自分のことを中心に考えてしまいがちではないでしょうか。一人ひとり素晴らしい考え方を持っていると思うのですが、もっと視野を広め、物事をとらえて行動してほしいです。自分を高めることはとても大事ですが、学生として学校で学べるのは、社会の支えがあるからです。そのような場所が国の税金によって与えられていることをもっと認識して感謝して下さい。そして政治に対して自分達にも責任があることを理解して積極的に参加して下さい。
とは言っても、若い人は何より元気があります。吉川出身の有名人に元女子プロレスラーの北斗晶さんがいらっしゃいますが、中学生のころは元気すぎるくらいだったそうです。だからこそ、彼女は厳しい世界にチャレンジしたと思いますし、今もその持ち味があります。かえって元気すぎるくらいの方が冷静でパーフェクトよりもいいですね。ですから、若い人にはパワーをもちつつ、社会に目を向けてほしいと思います。



(インタビュー:2012-11-22)


1947年3月11日生まれ
1999年 埼玉県吉川市長 4期目
※プロフィールはインタビュー時のものです。

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