ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.100 [首長] 多田 重美 八潮市長 「『何かを一生懸命走り切ることで、見えてくることがきっとあります。きっかけはどこにでもあるものです。』」

市長

八潮市長 多田 重美
所属 八潮市長
選挙区 埼玉県八潮市

 

政治家を志そうと思ったきっかけを教えて下さい。


まずは私の生い立ちですね。私は岩手県遠野市の農家に八人兄弟の末っ子として生まれました。兄が戦死したから誰が家を継ぐかということになり、姉が継ぎ、私はお手伝いすることになりました。それが小学校6年生の時です。それから高校を卒業して3年間実家で働きました。その後、姉も計算したのでしょう。「お前のために早々に出た方がいい」ということになって、それからまた私の人生はやり直しになりました。
大学卒業後結婚して、八潮市の団地に住むことになりました。
その団地の自治会の役員会などの会合やイベントで、意見が合わず揉めることがあったのですが、少しばかり調整をしたら、「次はぜひ自治会長に」とみなさんに言っていただきました。それが私の「政治」のきっかけです。
そして自治会長をやっていた平成元年、40歳の時に市議会議員になり、平成13年、52歳の時に市長に当選しました。地盤も看板もないなかで当選できたのは、一生懸命やってきたからだと思っています。3期12年間頑張ってきましたが、次の選挙に関しては若い人に譲りたいと考えています。



市長をやめてしまわれるのですか?


地域というものはトップがどういう人間かによって変わります。同様に10年経てば、時代も変わります。とにかく与えられた期間、一生懸命走って次の人にバトンを渡す、それが首長の仕事だと思っています。私はもう十分一生懸命走りました。
私の政治家としての信条をひとつお話ししますと、自分に与えられたことに対して信頼を得るまで一生懸命やることです。「この問題に関してはあなたしかいない」と信頼を得ること、それが私の一生の奥底にあるものでしょう。
もし政治家を志すなら、与えられたことを一生懸命やることが大事です。そうすれば周りが自然と押し上げてくれるものです。それがなければ、手を挙げても、風が吹いた時は当選するかもしれませんが、長続きはしないでしょう。
国政を目指したり、市政を目指したりするのならば一時期、倒れるぐらい勉強する必要性があると思っています。それは学生時代に限らず、必要になった時、壁が見えた時、「もうこれ以上できない!」というところまでやることです。そうすれば「自分はもうここまでやった」と満足も出来ると思います。その積み重ねが自分の夢を叶えてくれるでしょう。



身の回りにはやりたい事が描けないという若者の話をたびたび聞くのですが、どう思われますか?


いつの時代でも、我々の時代でもあった話です。私もはじめは農家を継ぐのだと思っていて、次は教師になろうと思ったこともありましたし、法律の道を志した時もありました。しかし今は市長という職についています。
そういった様々な事をやってきて、やはり、今与えられたことを一生懸命やることが大事だと思っています。ただ、学生時代にはあまり「使命感」というのを持ちすぎない方がいいのではないでしょうか。もやもやした何かを大切にして、自分の興味をもった分野を入門から勉強しましょう。



市長から若者にアプローチしていることは何かありますか?


成人式や卒業式でよく言うことがあります。中学校、高校までは自分の事で精一杯だという人が多いでしょう。しかし、30歳頃になったら、もっと自分の地域に関心を持ち、自分の地域を知る努力をしてもらいたいのです。
自分の成長過程を見るとまさにその通りです。地域に関心をもったのは、父に付き添って地域の集まりに出た時です。そこで大人同士の争いが始まり、「ああ、うちの地域にはこういう問題があって、それで大人同士喧嘩しているのか。」と思いました。私が明確に地域を意識したのはその時でしょう。今は地域の役員になるのがいやだという人が多いように感じますが、地域の活動は地域を知る入口だと思います。年に関係なく、若い人も積極的に地域の行事に参加するべきです。



地域のイベントというものは、実際に顔見知りの存在や参加の重要性がわかっていても中々参加しづらいものだという印象がありますが、どうお考えですか?


顔を知っている人がいることは最高に良いでしょう。私が団地で役員をやっている時に多くのイベントを開いていたのですが、イベントの最中に参加者をじっと見ていて、その中で運営にちょっと関心がありそうな人、「私もやってみたいな」と思う人が、意外にたくさんいるものです。目つきが違って見えるので分かり易いです。
そこで忙しく作業をしながら「申し訳ないですが少し手伝って頂けますか?」と頼んでみると、気持ちよく「いいですよ」と言ってくださり、翌年「役員をお願いできませんか?」と頼むと「いいですよ」となります。見抜く力というものは、地域で仕事を進めるために、とても大事なことなのです。



最後に若者にメッセージをお願いします。


例えば、いかに雑巾がけをしっかりやるか、というところから考えましょう。誰もがやりたがらない嫌なことも戦略をもって実行していけば、いつの間にか重役となっているかもしれません。戦略を持つことは大事ですが、それを叶えるために小さな夢ではなく、大きな夢を持ってください。



(インタビュー:2012-11-29)


日本大学法学部法律学科卒業
平成元年 9月 埼玉県八潮市議会議員
平成12年 9月 埼玉県八潮市議会議長
平成13年 9月 八潮市長
※プロフィールはインタビュー時のものです。

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