ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.104 [首長] 松本 武洋 和光市長 「地域にも面白いことがたくさんあります。まずは地域を知ることから始めましょう」

市長

和光市長 松本 武洋
所属 和光市長
選挙区 埼玉県和光市
公式サイト

 

政治家を志したきっかけを教えていただけますか?


私は市長になる前は市議会議員で、その前は出版社でサラリーマンをしていました。そこでは会計や経済の分野、特に企業の会計改革やディスクロージャーを専門にやっていて「ディスクロージャーを推進すれば、日本の会社がよくなって日本が元気になるはずだ」、そういう意識で仕事をしていました。私がその仕事をしていた時は企業のディスクロージャーが大きく変わった時期でもあったので、必死で仕事に取り組んでいました。そんな時にたまたま住んでいた和光市周辺の4市で合併の話が持ち上がったのです。推進派の主張は「合併特例債の700億円で大規模な開発を行うべきだ。やらなければ損だ」というものでした。私はその主張に疑問を持ち、市政について調べているうちに市議会議員という職業をやってみようと思い、2003年の選挙に出馬し当選しました。
現在は企業だけではなく行政にもディスクロージャーが求められる流れの中で企業のよい所を行政にも取り入れつついろいろな取り組みを行っています。



今回の衆議院選挙をうけてどのようなことを感じましたか?


今回の選挙の投票率は大変低くなりました。
人間は一度失望してしまうとそこから立ち直るのが難しいのだと思います。これは市長選挙にも国政選挙にも共通して言えることだと思いますが、選挙では大サービスを宣言せずに勝たなければなりません。大サービスであればあるほど実現するのは難しくなりますからね。自分の市長選挙の時にも相手方のマニフェストの実現可能性を仲間とひとつ一つ吟味しました。やるべきこと、そして実現できることを提示して選挙に勝たなければしょうがありません。
国政についても、民主党も前回の衆議院選挙であのような大サービスのマニフェストを掲げていなければ、ごたごたもなく政権運営をできたのではないかと思います。そのように政策を作る側も投票する側も、それが実現可能かどうかという意識が成熟していかなければ、マニフェスト選挙はなかなか難しいのではないかと思います。



特に若い年代の投票率が低くなっていますが、若い年代が選挙に行くようにするにはどうすればいいでしょうか?


そもそも若者が選挙に関心がないのは仕方がない面もあるかと思います。なぜなら若者は行政に世話になりませんからね。病気になることも少ないし、子育ても介護も少し遠く感じるも否定できないかもしれません。しかし、それは極めて近視眼的な考え方であって、誰であっても必ず年を重ねますし、子育てをする可能性や福祉のお世話になる可能性もありますよ。その10年後や20年後に責任を持つと言うのが投票という行為だと思います。
若者が選挙に関心を持てない気持ちはわかるけれども、そのような中長期的なビジョンをもって投票に行ってほしいです。逆に言えば若者に中長期的なビジョンを提示することができれば、若者に投票に行ってもらえるのではないかと考えています。



和光市の中長期的なビジョンとはどういったものでしょうか?


私はいつも東上線の武蔵野市を目指したいと言っています。緑があって住宅地としても定評がある、「私は和光に住んでいるんですよ!」と和光に住んでいることを誇りに思えるまちにしたいですね。
大前提として、和光市はまだ発展途上の町です。場所として地下鉄の始発駅があるということで非常にいい場所にあるのですね。しかも駅の北口側はまだ充分に開発がされていません。北側を開発することによってまちとして大きくのびる要素があります。来年から北口側の開発も始められることになったので、開発を着実に進めて市全体として一体感のあるまちづくりを行っていきたいと思っています。
もうひとつはまちのブランド力の向上が必要だと思っています。和光市には理研や司法研修所、ホンダなど高度な研究を行っている組織や自衛隊の音楽隊など様々な資源がありますが、今までは充分に活かしてこられなかった反省がありました。
そこで私が市長になってから、小学生が市内のそのような組織で最先端の技術に触れる「子ども大学」を始めたり、自衛隊の音楽隊に地域の学校のブラスバンドの指導をしてもらったりしています。そのような取り組みを通して市内の資源を活かしつつ、和光市民が楽しかったり、得をしたりする機会をこれからも増やしていきたいと思っています。
そして市内の有名な組織と和光市というイメージをつなげていければと思っています。



市政の難しさとやりがいを教えてください。


難しいのは市政をやっていると理屈が通じないことがあることですかね。出版社にいる時には理屈や理論の世界で仕事をしていましたが、社会に様々な人がいます。しっかりと説明しても納得してくれない方もいますし、そもそも説明を聞いてくれない方もいます。そのように幅広い方々を相手に仕事をするのは同時に市政の面白さでもありますが、やはり思うようにはいかないですね。
やりたくないことでも、現実に向かい合って実行しなければならないのも難しいところです。例えば、私が市長になった時には公共サービスの料金の値上げが必要なのにも関わらず、長年値上げがされていない状況でした。値上げをすれば人気も無くなりますし、次の選挙で落とされてしまうかもしれません。正直やりたくはありませんが、無料で提供できるものばかりではありませんし、ある程度の適正なご負担をいただかないと市の財政が成り立ちませんから、責任を持ってやらなければいけません。
しかしながら、長をしていると自分の決断がダイレクトに反映されるのでとても面白く、やりがいを感じます。例えば、駅前の混雑していた交差点に右折レーンをつくろうとした時には苦情を言う人もいましたが、私が説明会に行って直接話すなど努力をし、実際に完成するととても快適になり、苦情もなくなりました。自分の決断によってまちが良くなっていくのは楽しくて、すごく気持ちがいいですね。



若者へのメッセージをお願いします。


地元のまちに興味を持ってほしいです。
若いひとの多くはきっと地元のことには興味が無いと思います。ですが少し目を向けると地域には面白いことや楽しいことがきっと沢山あるはずなので、そこに気がついてほしいと思っています。今度の3月には、地元のまちを知ろうというイベントを開催します。地元のことを知るための小さなイベントの集合で「オンパク」といって、もともとは温泉地別府で始まったものです。観光地で広まったオンパクを住宅地である和光市でもやるという、全国での初めての取り組みです。地元の人が地元のことを知る機会を是非若いひとに持ってほしいです。
学生時代、渋谷に住んでいた時に地域でイベント運営に関わっていたのですが、そこで一緒にやっていた仲間が別の地域で、かたちを変えて地域づくりに関わっていたりします。いま思えば、学生時代に地域に関わったことが、その場所ではなくとも将来地域に関わるきっかけになっているかもしれません。
また、その時々に一生懸命になってほしいと思います。学生時代のアルバイトを通して社会にいろいろな仕事・人がいることも知った経験が今になって活きてきていますし、出版社でお世話になった方に議員、そして市長になってからもお世話になっています。その時々の仕事に一生懸命に取り組むと、いつかすべてが繋がってくると思います。



(インタビュー:2012-12-19)


平成4年 早稲田大学法学部卒業
平成15年 和光市議会議員 2期
平成21年 和光市長 1期
※プロフィールはインタビュー時のものです。

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