ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.107 [首長] 山本 龍 前橋市長 「変人と言われることは名誉です。お調子者になって、皆の調子を変えていきたいのです。」

市長

前橋市長 山本 龍
所属 前橋市長
選挙区 群馬県前橋市

 

市長になったきっかけをお聞かせください。


もともと地方政治の独立性が好きで、地方自治にこだわってきていました。そして、いつかは首長として地域デザインを先導したいと思っていました。市長の前は群馬県議会議員でしたが、首長という目標は持ち続けていました。



市長としてのやりがいはなんですか?


議会は先輩後輩でどうコンセンサスを取るかにも力を注ぐ必要がありますが、市長は自分の頭の中で思い描きながらコンセンサスを取るため、妥協もいらないですし、そこが楽しいです。政策をアウトプットしたものの、市民の皆さんや議会との見解の相違により進展しないこともありますが、政策として提案するものは前橋への私の思いが反映されていますし、そこに市長としての責任があるということが、またやりがいと言えます。
そして、市長の活動は直接市民の暮らしと直結しています。前橋市政のアクションが市民にすぐに見えて、リアクションがすぐに返ってきます。それが喜びであったり、お怒りであったり様々ですが、市民とつながっているというリアリティがあります。“政治は生きている”という事が実感できます。



学生の時についてのお話をお聞かせください。


高校時代は理系の真面目な学生で、医学部を目指していました。しかし、医学部へは行かず、文系へ進学しました。私自身さまよっていた時期でもありました。就職ではスキーと登山の専門誌の会社を受けようかと思っていたほどです。
しかし、社会に対し何らかのサポートをしたいという気持ちは子供の頃からあり、政治に触れることでそれが目覚めました。きっかけは、大学三年生の時に小渕恵三元総理の秘書になったことでした。大学の先輩後輩の関係でお手伝いの話があったので、面白そうだなと思ってお手伝いすることになりました。今思えば学生では体験できないことばかりで休む暇もありませんでしたが、忙しいのが好きになっていきました。こういう社会貢献もあるのだなと思い、“政治”というシステムの中で社会に関係していこうと思い始めました。それまでは、至って普通の学生でした。



市政と若者の関わり方についてはどうお考えですか。


私は、若者も立派な市民であり、重要な市の構成員であると捉えています。期待もしますし、負担をしてもらう時もあります。ともに前橋市を作っていくパートナーですから、若者という特別な括りではなく市民として見ています。
投票率に関しては、若者が当事者となるという事を常に訴えてきました。しかし、どうしても当事者になり得ません。若者にとっては、遠い課題が多いからです。若者に近く関係があると感じられるような課題、例えば若者に対する課税の考え方などを政治が提示することが必要であると思います。
政治家は、そのような課題をなんとなく避けているような人が多いように感じられますし、様々なことについて、若者に選択させることを怠ってきました。社会保障も若者の税を高齢者に振り分けています。もう少し世代間の政策を明示し、若者の税金を若者に使っていくという意識を持たせるようにしなければならないと思います。若者にそれを伝え、これでいいのかという当事者意識を持たせなければならないでしょう。
また、選挙に行く意味を感じない若者が大半だと思います。大人は、なかなか若者に“投票に行くべきだ”というメッセージを出していません。得票数を意識して自分が当選することだけを考えている政治家を社会の未来を考える政治家が淘汰するためにも若者が投票に行くことが大切だと思います。



前橋市の見所を教えてください。


私が何より自慢に思っているのは、市民の質感です。この市民の質感が、前橋は高いと思います。家のドアを開ければその人が作った俳句や短歌があり、その人が生けた生花が飾られており、また、イングリッシュガーデンが綺麗であるといったように暮らしの中にゆとりがあります。そこが前橋の良さだと思います。政策的にも質感を高めるような政策を作りたいのですが、これがまた難しいのです。この前橋の見所は“もの”と言うよりは“暮らしぶり”でしょう。市役所がどうというよりも、大事なのは市民活動の多様性です。一人ひとりの市民が、市民の多様性の花畑になってほしいと思っています。市民の善意に任せ、様々な花が咲き乱れることでこの彩りがもっと鮮やかになると思います。
一方、市役所は暗いというイメージがあり、これを払拭していこうと私は考えています。私はデザインに興味があるので、市役所を来訪者にも配慮したデザインにしようと思っています。デザインは、相手に対してのおもてなしです。市民の質感に合うような、カジュアルなイメージのデザインにし、市民皆さんと市役所とのバリアフリーを進めたいです。
また、前橋は今までにアニメやドラマの舞台となることがありました。コミックマーケットに行ったり、初音ミクのデザイナーさんと新しい前橋の価値を見出すような活動をしたり、様々なものを融合させて新しい何かを作り出すことも喜びです。
私は変人と言われることもありますが、この変人さをもっと極めなくてはと思っています。自分自身の幅を広げ、市民の個性を見出しながら、それぞれが思っている面白いことをやってほしいのです。際立つ個性が前橋を活性化させ、そのような個性が磁石となって前橋で引き寄せ合えるような自由な社会を作っていければいいと思います。



若者を取り込んだ施策について、どうお考えですか?


街のいろいろな祭りには、もちろん大学生なども参加しています。だんべえ踊りという前橋独自の踊りがあり、保育所などでも教えていますし、老若男女大勢の市民が踊れます。
また、前橋には大学や専門学校が数多くあるため、インターカレッジミーティングという形で大学が連携する“まちなかサロン”のようなイベントを行なっています。これは、先生が学生へのアドバイザーとなり、市が場所を用意するなど大人が支えはしますが、主体は大学生・専門学生のイベントです。異なる大学・専門学校の様々な分野の学生達が集まり、起業や情報誌の作成、イベントの運営などを行います。市はきっかけとなる案を出しますが、あくまで学生主体で活動してもらいます。謝罪や責任を取るのは大人が引き受けるので、失敗してもいいからどんどんやってほしいと思っています。お調子者と言われるのは、私にとって名誉です。お調子者になることで皆の調子を変えたいと思っています。若者たちに、新しい価値観をどう作るかを考えてもらいたいのです。学生には自由に動いてもらい、そこから、より前橋に対する愛着を感じてもらえたらと思っています。さらには、経済基盤の形成や雇用問題の解決につながることも期待しています。



若者へのメッセージをお願いします。


とにかく選挙の際には、投票に行く事です。二十代の投票率は30%程度と六十代の約半分で、人口比は六十代の半分です。つまり、六十代の1/4しか投票総数がありません。政治家が当選するための票の獲得だけを目標としたら、若者への政策を考えなくなってしまうのではないでしょうか。4倍投票がある高齢者の政策に目を向けたほうが確実に当選しますからね。一票を放棄したと思うでしょうが、自分の一票が、実は誰かの一票になっていることがあるのです。棄権しなかった人に票の重みを与えているのです。若者の投票率が増えれば、政策の中身が変わっていきます。例えば、就労支援、起業支援活動の場づくりなどに重きをおく政治家も増えてくるでしょう。目が向く政治、やりがいのある社会が必ず来ます。現状を変えるためにも、一人ひとりがよく考えて投票に行く事が大事だと思います。



(インタビュー:2012-12-5)


昭和60年3月 早稲田大学商学部卒業
平成  7年4月 群馬県議会議員(3期)
平成21年1月 群馬県議会議員(1期)
平成24年2月 群馬県前橋市長
※プロフィールはインタビュー時のものです。

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