ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.127 [首長] 松戸市長 本郷谷 健次 「信念を持って、前を向いて、目標を持って前へ進んで行ってください。」

市長

松戸市長 本郷谷 健次
所属 松戸市長
選挙区 千葉県松戸市

 

市長になろうと思われたきっかけはなんですか?


僕は大学卒業後ずっと民間企業に就職していました。大学時代は財政学を学んでいたのですがきっかけがあって50歳になったころに、東京都と神奈川県、千葉県、埼玉県の財政分析をおこなう機会がありました。
今から10年以上前のことなので、まだ地方分権化が進んでいませんでしたが、東京都は行政体制が全く異なるため、そして神奈川県は当時から知事が財政改革に相当熱心だったため、それぞれ地域の特徴が見える内容だったのですが、埼玉県と千葉県は内容がほとんど同じでした。埼玉県と千葉県は地理的条件も経済構成、県の特徴も全然違います。それなのに財政構造がほとんど全く同じなことに大変な違和感をいだきました。これは、必然的になったというわけではなくて、国の政策に忠実な財政を行なっていたからなのだろうとおもいます。

この現状を目の当たりにし、これからの街づくりを考えた時にこれではまずいと、民間視点の組織づくり、政策立案、マネジメントという僕自身の持っているリソースで何かできることがあると思い再びパブリックな領域に興味を持ちました。
最初は、監査法人でパブリックに対するコンサルをしていたのですが、そのうち市長選への出馬を打診され、出馬を決めました。コンサルをしていた時代には国に対してのものが多かったのですが、地方自治がトレンドになっていく中で市長という立場で従来私が民間で培ってきた経験が活かせると思ったのも、出馬を決めた一つの要因です。



民間のやり方で行政をやろうとして難しかったことはありますか?


これは相当あります。そもそもの仕組みが全く違いました。国の制度そのものも地方分権化を進めると言いながら縦割り行政でしたし、風土、意識、給与制度、組織の考え方など違うものは列挙に暇がありません。これをどうやって状況を見ながら、全体を変えていくのかが僕の考えている課題の一つだと思います。
特に縦割り行政というものには大変苦労しました。縦割りというのは、範囲が限られている間はとても良いシステムで、公務員の方々もその一つの範囲についてはとても熱心にやっていただけます。ところが、街づくりより全体のマネジメントの視点から仕事をしようとすると、このシステムは大きな障害になってしまいます。
縦割り行政の中では一部の最適化をねらっていて全体の最適化を狙えません。方針などから考えなければならない内容では、民間企業であればトップは中間マネジメントを担う部長・本部長級の方々と話せば済む話のはずなのに、行政では部長・本部長クラスよりも前線にちかい課長・課長補佐のほうが遥かに仕事内容を知っている。ところが、こういう方々との話から進めると、政策議論からでなく技術論からの話ばかりとなってしまいます。もちろん技術論を軽視するべきとは言いませんが、そうなると市長がそれぞれ個別の分野に特化して勉強して技術論を論破しないといけなくなります。全体のバランスをとるマネジメントができる人間・役職がいないということが如何に大変かを実感しました。



今の市の課題とはなんですか?


地方分権化の過程で、今まで国が決めていた内容のうち多くのものが地方で決めることができるようなシステムになって来ました。これはとてもいい事なのですが、実際の中身を見てみると、ほとんどが国の指針のコピーである場合がとても多いです。最初のうちはこれでも仕方が無いかもしれませんが、中長期的にはやはり市でひとつひとつ自分達の自治体に合うか合わないかを議論していきたいというのが本音です。ところが、そうなるといまの市のマンパワーや能力では圧倒的に足りません。

今までは頭脳は国で手足は地方という一見効率的なやり方だったのですが、頭脳が地方に降りてくると、各市の負担が極めて大きくなります。例えば、各手足が一つずつ頭脳を持たなければならないというのが現状です。方向性としてはこの方向で行くべきなのですが、きちんとした頭脳をもてるように、そういう力・体質をつけはじめなければならないというのが一つ市の課題だと思っております。



市政の中での若者との距離はどのように感じますか?


これからの市政を考えた時に、行政だけではすべてを補えないと考えています。特に、きめ細かい街づくりには市民や専門性を持ったNPOが必要です。これがいわゆる協働事業というもので、ニーズとしてはこれがあります。

ただ現実として、今社会に興味を持っている人の多くは、専業主婦かリタイア層で現役層や若年層は地方に目を向けることができていません。この分野で食べていける方法をきちんと考えて行かないとこういう人たちの目はこちらに向かない、そう感じています。



市長は学生時代どんなことをされていましたか?


僕が学生のころは学生運動の時代でした。高校までは普通に学校に行って勉強して、スポーツしてという生活だったのが、大学に入っていきなりこれを目の当たりにしたので、正直なところ、最初はとても驚きました。4月に大学に入ったのに6月まで授業やってその後はずっと休校という今では考えられないような状況の中で、初めて社会やそういったものを考えさせられた時期だったと思います。



最後に若年層へのメッセージをください


選択肢の自由が増えてきた、とても大変な社会に入ってきているなと思います。
僕達の時代は、終身雇用が当たり前だったのですが、今の方々はそうではありません。だからこそ選択の自由も広がるし、同時に選択には責任が伴います。責任を持って自分の人生を歩んでいくというのは、面白い反面とても大変なことだと思います。信念を持って、前を向いて、目標を持って前へ進んで行って欲しいと思います。



(インタビュー:2012-11-16)


昭和47年           東京大学経済学部卒業
平成18年  11月  松戸市議会議員(1期)
平成22年    7月  第21代松戸市長
※プロフィールはインタビュー時のものです。

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