ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.155 [首長] 伊澤 史夫 千葉県白井市長 「人と人とのつながりを大切にして、自分の地域を創ってほしい」

市長

千葉県白井市長 伊澤 史夫
選挙区 千葉県白井市

 

政治家になったきっかけを教えてください


私はこの白井市が大好きなんです。元々父が公務員で叔父が議員と、行政に触れる機会がたくさんありました。なので自分も白井市のために働きたいという想いをずっと持っていたんです。
そこで、大学卒業後は市役所に就職しました。政治家への転身を決めたきっかけとなったのは市職員時代に体験した北総線運賃問題でした。かいつまんでお話ししますと、北総線は運賃が高いことが長年問題になっており、周辺の自治体で補助金を出すことで値下げを行っていたんです。
しかし、千葉県や周辺の自治体が運営会社と共同して追加で補助金を出す際に、白井市だけが議会で反対され物議を醸しました。もともと白井市には市民運動として北総線の値下げを目指す運動が根強くあり、補助金の拠出に反対していたという経緯もあったのでそれが表に出てきた形ですね。そのような中でさらに市長が市長権限で補助金の拠出に賛成したものですから、市長の不信任や予算の否決がおこるなど状況はさらに複雑になりました。結果として、白井市がひとつの問題で真っ二つに割れてしまうほどの大きな問題に発展してしまいました。
市の職員だった私は大好きな白井市が引き裂かれてしまうように感じて、非常に悲しく、もどかしかったですね。その思いから皆が新しい夢をもとめるニュータウンとしてのまちづくりをやり直し、この混乱に終止符を打ちたいと感じたのが市長選に立候補したきっかけです。



白井市が2つに分かれていくのはひしひしと感じられたのですか?


はい、当時の市長は平成20年の市長選で北総線の運賃値下げを目指すという公約を掲げて当選しました。当選して実際に行政に入って内情をみると、県や近隣の自治体が共同で補助金を拠出するスキームの議論が進んでおり、白井市だけ拠出しないというのは大変難しい選択でした。結果として市長は、やむを得ず議会の反対を押し切って専決処分で補助金を拠出しました。
反対会派はそれを違法と主張し、国や市を訴える裁判にまでなってしまったのです。この北総線の問題はこの地域にとって大変大きな問題なのです。



北総線の値下げについて打開策はありますか?


私の公約のひとつに公的補助のない更なる値下げを掲げました。北総線の経営状況も改善しており値下げを実施できそうだと考えています。そのための準備も着々と進んでいるところなので、なんとか解決したいと考えています。



目指したい街のビジョンを教えてください


白井市は首都近郊にありながら、都市部と工業、商業、自然の調和のとれた街です。千葉ニュータウン構想の一部であるこの街には、千葉ニュータウンへの入居が始まった最初の3年間は年間5000人くらいの方が転入してきました。そうすると「ニュータウン住民という意識」と「元から住んでいる住民という意識」が混在することになります。
このような意識の垣根を越えて「白井市に住み続けたい!」という想いを持ってもらえるような街にしたいですね。



街のビジョンを実現するための取組みを教えてください。


現実にはみんなが白井市を好きになれば、いつから住んでいたなんて関係なくなると思っています。そのために、まずは白井市に知ってもらう必要があると考え、白井市民大学校という取組みを行っています。市長が学長を務め、白井市の歴史や財政状況について紹介しています。
いいところも悪いところにも向き合ってもらって、白井市を良くする方法について考えることから、市を好きになってもらえればと考えています。そしてそれを経て、白井市を良くするにはどうすればいいのか、自分の好きな街をどのように運営していくべきなのかを一人一人が考えるようになってくれればこれ以上の喜びはありません。



若者向けに行っている施策はありますか?


昨年からは小学校でも6年生の授業に政治に関するものがありますので、1単限、私が講師を行っています。
子供が家に帰り、「白井市にはあんなところがあるから行ってみようよ」というかたちで子供のことから白井市について知り、好きになり、家族へそして地域へ広がっていけばいいなと考えています。
また、白井市ではこころの教育(ピアサポート)を約10年前から行っているのですが、そのおかげか白井市の成人式は荒れたことがないんです。昨年の成人式の実行委員では市長と若者の対話を提案しに来てくれました。そこでは議題を「巻き込み」と設定し、東日本大震災の際に地域のために何もできなかったことを反省して、地域貢献のためにはどうすればいいかを考えました。
結果として「地域のひとと助け合うためにはどうすればいいのか?」という大きな問題を「お隣のひとと話したことはある?」という小さな心がけから見直していくという大変有意義な議論になりました。事実そうした些細なことから地域は変わっていくものです。挨拶をすることで次第に仲良くなって、日頃から、また困った時にも助け合える関係になっていく。人と人が挨拶を交わすことからコミュニティが生まれお互いに助け合っていく。こうした日本の伝統的な人間関係の形成プロセスを辿れるように、市としてきっかけをつくっていければ連帯感のあるいい街になると確信しています。



市長の人と人とのつながりを大切にするその考え方はどのようにして獲得されたのですか?


市政において最も留意すべきことは、各地域の役割とその中で生活する人々のつながりです。なぜなら行政のできることには限界があり、市民の皆様と協力しなければ成し得ない事がたくさんあるからです。災害時には特にそれが顕著で、行政機関の人員だけでは到底救助が追いつかない場合、地域の人々の共助が救助活動を支える最も重要な基盤になります。
しかし、その地域の構成員たる人々は常に流動します。白井市においてもそれは例外ではありません。ここに古くから住んでいらした方々の多くは農業を営んでいた方々です。そこに工業化を経て農業を全く知らない世代が流入してくる、そしていずれは彼らとも価値観の違う人たちも入ってくる。そうすると新たに共通点を探すことが一番早く、堅実な方法であるわけです。その共通点を探すためには、相手の話に耳を傾け、一度できた関係が長く続くように留意することが必要です。
というわけで市の行政を司る以上は、私が人間関係を一番に大切にしなければいけませんよね、となるわけです。



若者へのメッセージをお願いいたします。


白井市をよく知って、白井市を好きになって、白井市をともに創っていきましょう!そして我々の子孫に、白井市の文化や街並みを受け継いでいきましょう!



(インタビュー:2013-07-05)


生年月日    昭和30年7月14日

主な経歴
昭和49年3月    市川高等学校卒業
昭和53年3月    城西大学経済学部卒業
昭和53年4月    白井町役場入庁
平成19年4月    健康福祉部長
平成21年4月    市民経済部長
平成23年4月    白井市役所退職
平成23年5月    白井市長就任

家 族 母 妻 こども2人
趣 味 太極拳(2段) 読書
※プロフィールはインタビュー時のものです。

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